前回のTPOでは結婚式で着る着物についてご紹介しました。
今回はお葬式や法事で着る着物編。
人には少し聞きにくいけれど、いざというときとても大切なきもの知識をご紹介していきます。
目次
着物の「格」って?
「格」というと小難しく聞こえるかもしれません。
着物の「格」とは簡単に言えば「TPOに沿って、どのような場にふさわしい着物か」という位置づけのことです。
詳しくは前回TPOごとに見る「最適な着物」とは?~結婚式編~で解説しています。
着物は「フォーマル」「カジュアル」と大きく分けられます。
その大きな分類の中に「振袖」「黒留袖」などの着物が属し、それぞれ特徴や着るのに適する立場や式などがあります。
例えば、振袖は主に成人式で新成人さんが、黒留袖は主に結婚式でお母様が着られますよね。
▼振袖
▼黒留袖
「どんな着物」を「どこに着ていく」かを捉えていくことが大切です。
次から実際に場合と立場を見ながら紹介していきます。
お家/地域などのルールを要チェック
はじめに気をつけておきたいのが、独自のルールがあるときです。
地域であったりお家ごとに、立場で決められた着物や服装がある場合があります。
弔事・法事のときの着物は?
お葬式=真っ黒の喪服というイメージの方が多いと思います。
弔事の際に遺族など親しい立場でないときは着物を着たことがない…という方も多いのでは?
現在では、いわゆる黒喪服(黒紋付)を着るのは喪主や親族というのが一般的です。
たとえば普段から着物を着られている方や、故人を送る会に少し背筋を伸ばして改まった装いをしたいという方に、不祝儀のきものTPOをご紹介していきます。
お通夜・葬儀・告別式
お通夜は夜通し線香と灯明の火を絶やさずに、ご遺体を見守り遺族の悲しみに寄り添う儀式です。
葬儀と告別式はそれぞれ宗教的な意味を含む儀式・含まない儀式の違いがありますが、近年では同日に行うご家族も増えています。
同日の場合の装いは葬儀・告別式ともに共通でよいでしょう。
和装では、故人との関係や立場によって装いを変えるのが望ましいとされています。
喪主・親族・親しい友人黒紋付(黒喪服)を着ます。
黒紋付とは、黒羽二重または黒縮緬の光沢のない黒一色の着物に、五つの染め抜き紋が付いた、喪の正装です。
紋の位置は両胸、両袖、背中で合計五つです。
紋(家紋)は、和装においては着る方のルーツを表す大切な指標となります。
黒紋付に入れる紋は、地方や風習などによって実家の紋であったり、婚家の紋であったりと様々です。
もしこれから黒紋付やほかの紋入り着物を作ることを検討しているのなら、お家の紋はどういったものなのか、しっかりと確認しましょう。
▼昨今の黒紋付事情について
▼紋、家紋について
弔問客(ご近所、知人、友人)
和装をするなら、色喪服を着るとよいでしょう。
「色喪服」という着物は、聞き慣れない方も多いかと思います。
色喪服とは、簡単に言えば「色無地に黒の喪帯を合わせた着物」のことです。
色無地は喪帯を合わせると弔事に、金銀の帯を合わせると慶事に着用いただけるので、一着持っておくとマルチにご活用いただけますね。
また、色無地に黒の一つ紋羽織を羽織る方もおられます。
弔事で色無地を「色喪服」として着るには
まず、喪用の帯を合わせることで、色無地は不祝儀着物の役割を持ちます。
色は紫・紺・グレーを代表として、周りの方の黒い服の中で不自然にならない暗色が良いとされています。
素材についても、あまり光沢感が強いと不祝儀の控えめな雰囲気にならないため、光沢感が弱いものが良いでしょう。
また、色無地は紋の数で格が変わってくる着物ですが、ご近所や知人などの立場であれば一つ紋で大丈夫です。
CHECK! 色無地とは?
生地の織りからなる地紋が、あるタイプとないタイプがあり、一般的に地紋ありがフォーマル向きの色無地と言われています。
ただし弔事で色喪服として着るときには、地紋の光沢感にお気をつけくださいね。
法事
法事になると、親族の方でもきものをお召になる方は少なくなってくるでしょう。
それでも、きちんと和装で出席されるなら下のような着物がおすすめです。
喪主・親族・参列者色無地に黒の一つ紋羽織、または色喪服を着るとよいとされています。
年忌を重ねるにつれ、装いは喪の略礼装にしていくのが一般的です。
喪主や親族であっても、初七日や四十九日以降の法要で黒紋付(黒喪服)では大げさかしら、といったときにオススメです。
黒紋付(黒喪服)に必要な道具とは
黒紋付を着るために必要な道具は、大まかにいえば普通の着物(例えば訪問着など)を着るときに使う道具と同じです。
普通の着物用の道具と異なる点は、黒い道具を使うところです。
呉服屋さんなどで黒紋付を購入すると、夏・冬の着物一式と一緒に着付け道具もセットになっている場合もあります。
CHECK! 絶対に「黒」?
ですが、もしすき間からチラと見えてしまうと普通の着物よりも小物の色が目立ってしまいます。
その時にピンクやカラフルな色が覗いてしまうと悲しみの雰囲気に水を差してしまいますので、差支えのない色を選びたいですね。
着物一式
◉黒紋付(黒喪服)
夏用の絽や単衣の着物と、冬用の袷着物があります。
近年は暑い時期が長くなってきたため、「○月~×月は袷」のような決まりに縛られすぎず、着る日の気温を鑑みて使い分けをするのが良いでしょう。
着物に合わせて、帯や長襦袢、帯揚げ・帯締めといったものも夏冬の使い分けをします。
◉黒喪帯(画像は袷用)
喪の正装では着物と同じく黒い帯を結びます。
帯にも夏冬とあり、着物を夏用にしたら帯も夏用に、と選べば良いでしょう。
◉長襦袢(画像は袷用)
長襦袢は生地が白く、無地か紋意匠のものが一般的です。
◉帯揚
▼袷の帯揚
▼夏の帯揚
帯揚げは画像のようなちりめん素材が一般的ですが、絞りをお持ちの方もいらっしゃいます。
◉帯締(帯〆)
▼袷の帯締
帯締めも画像のような平組をお持ちの方が多いと思います。
中にはこだわって組紐の帯締めをお持ちの方も。
◉草履・バッグ
草履・バッグともに黒を用います。
バッグはシンプルなものを、草履は布製と革製どちらもお使いいただけます。
着付け道具一式
◉肌着(肌襦袢、きものスリップなど)
ワンピースタイプ、上下分かれたセパレートタイプ、どちらでもお使いいただけます。
◉衿芯
長襦袢の衿に入れて衿の形をしっかりと作るために使います。
◉足袋
足袋のサイズはご自身が普段履く靴と同じサイズで良いです。
甲高などお悩みのある方はストレッチが効く足袋にすると辛くなりにくくおすすめです。
フォーマルな着物ですので、白足袋を履くのが正式です。
◉腰紐 4~5本
厳密に黒、と決まっているわけではありません。
ですが、なにかの拍子にチラッと見えてしまったときに差支えないような色にすると良いでしょう。
白や黒が無難です。
4~5本あれば足りるかと思いますが、着る方の体型などによって多少本数が変わる可能性があります。
着付けをお願いするなら、着付けてくださる方に従って準備しましょう。
◉伊達締め(伊達〆)2本
腰紐と同じく、厳密に黒というわけではありません。
なにかの拍子に見えてしまったとき、あまりカラフルな色が覗かないようにしたいですね。
◉帯枕
お太鼓の形を整え、帯の着崩れを防ぎます。
隣に立ったとき、お太鼓の横から少し見えることがあるので、見えても差支えない黒が良いでしょう。
◉コーリンベルト(きものベルト)1~2本
衿合わせをきれいに整える道具です。
1本使う場合と、2本使う場合がありますので、ご自分の着付けスタイルや着付けをしてくださる方に従って用意しましょう。
◉前板
帯の表面をきれいに整えます。
ベルトが付いたタイプと差し込みタイプ、どちらもお使いいただけます。
困ったときは「きものコンシェルジュ」におまかせ!
訃報はいつも突然にあるものです。
ですが、報せがあってから着物や小物を確認すると思わぬ不足品などがあるかもしれません。
いざというときに困らないよう、お家にお持ちの道具のチェックだけでもしておくと多少慌てずに済むでしょう。
とはいえ、お家のタンスに着物や小物がたくさんあって何が何やら分からない、誰に相談していいかも分からない、という方もおられるかと思います。
そんなときにぜひご活用いただきたいのがきもの永見の 「きものコンシェルジュ」 。
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お困りの方はぜひご利用くださいませ。
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着た後はクリーニングを
黒紋付のような黒い着物は、ファンデーションや汗などの汚れが白く浮き出るととても目立ちます。
着た直後に汚れが見えなくても、時間が経ってから皮脂などが汚れとして浮き出ることも…。
特に黒紋付はいつ出番が来るか分からない着物。
出番がないに越したことはないですが、着た後にはクリーニングしてからしまっておき、もしもに備えておくと良いですね。
どこでクリーニングしたらいいの?
着物のクリーニング、「どこに持っていったらいいか分からない」という方が大半です。
着物をクリーニングするなら、やはり普通のクリーニング店より専門店にお願いしましょう。
呉服屋さんでクリーニングも扱っていることがありますので、事前にリサーチして依頼すると良いですね。
そんな残念を避けるためにも、呉服屋さんでのクリーニングがオススメです。
山陰地域の方ならぜひ私たち「きもの永見」にご相談くださいませ。
他店で買った着物でもOK。お見積り無料で承っています。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。