草履=痛い、そんなイメージをお持ちの方はおられませんか?
あるかも…と思った方は、正しい草履の履き方を知らないだけかもしれません。
今回は、足が痛くならない!長時間履いても辛くない!正しい草履の履き方をこの道50年の大ベテラン、草履職人の細井憲司先生に教えていただきながら見ていきます。
大阪ぞうり協同組合認定花緒挿げ技能士。
草履一筋、この道50年の大ベテラン職人。
今まですげた草履の数は20万足以上。
現在も年間1000足以上の草履をすげる草履のスペシャリスト。
草履を履くとなぜ痛くなるの?痛くない履き方って?
皆さまが草履を履いて、痛いと言われる場所は大きく2ヶ所あります。
①花緒の両端の付け根
②親指と人差指の間
これらには明確な理由と解決法があるので、一緒に見ていきましょう。
①花緒の両端の付け根が痛くなる理由と解決法
花緒の付け根が痛くなる理由の多くは 買ったときのままの形の花緒で履いているから 。
※すげる…台に花緒を取り付けること
この状態だとどんなに足の幅が狭い人だとしても、足幅より台の幅のほうが狭くなります。
このまま履けば狭い隙間に無理やり足をねじ込むわけですから、擦れて痛くなってしまいますよね。
解決法としては 花緒の付け根を思い切って開くこと です。
1.画像のように花緒を根本から外側に割るように、内側の布が表に見えるくらいグッと開きます。
2.開いた花緒の上に足を乗せるように履きます。
花緒を開くことで、足と花緒の側面が擦れることがなくなり、痛みが改善されます。
新品の草履と花緒を開いた草履を比べてみると…
その差は一目瞭然ですね。
花緒の付け根部分の痛みでお悩みの方はぜひお試しくださいね。
②指の間が痛くなる理由と解決法
指の間が痛くなる理由は きちんと履きすぎているから 。
皆さま、草履を履くときに足の指を草履の奥まで押し込みすぎてはいませんか?
草履と似た形状の靴といえばビーチサンダルですよね。
多くの方がこのイメージで草履とビーチサンダルで同じ履き方をしてしまっていますが、実は草履の履き方はサンダルとは違うんです。
ですので、サンダルの感覚で足を草履に押しこみ過ぎてしまうと、前坪(花緒の指の間に当たる部分)が指の間に食い込んで痛みの原因になります。
解決法としては 足の指で引っ掛けるように履く ことです。
前坪が指の間に当たらないように、親指と人差指で前坪を挟みます。
指の付け根と前坪の間に少し隙間ができるようにすると、長時間履いても痛くなりにくいのです。
深めに履くとしたら、画像程度の位置までがオススメ。
また、奥まで履かないということは必然的にかかとが草履の台からはみ出します。
草履としては、足が少しはみ出すのが正しい履き方。
なぜかというと、着姿の美しさというのはもちろんのこと、裾を踏んでしまう心配がないからなんです。
もし草履がぴったりすぎたり、逆に草履のほうが大きかったりして着物の裾を踏んでしまうと、後ろが引っ張られて着崩れや転倒の原因になってしまいます。
草履を履き慣れなくて時間が経つとはみ出たかかとが痛くなってしまう、という方は足にぴったりの台でもOKですよ。
☆レンタルした草履が痛い時は…
1.花緒を開いて、上から乗るように履く
2.奥まで履きすぎず、指で挟むように履く
このとき、サイズが合わない草履だとかかとが多めに出ることがありますが、2センチ程度なら草履としてはOKの範囲ですので安心してください。
特にご成人のお嬢様はお悩みの方が多いので、お友達同士で解決法を教えあって、成人式を良い思い出にしてほしいですね。
草履選びのコツとは
甲の高さを合わせる
前項でご紹介したとおり、草履は台からかかとが出る履物です。ですので、靴と比べて台のサイズが履き心地の全てになるわけではありません。
その代わりに草履の快適度を変えるのが甲の高さです。
きもの永見で草履のお直しのご相談をお受けするときも「足の甲が高くて花緒がきつい」というお声はよく聞きます。
そういったときは草履の専門店にお持ちいただくか、草履職人さんに調節してもらうのが確実です。
花緒の調節ができる草履か確かめよう
草履の中には、花緒の調節ができる草履と、調節ができない草履があります。
それらは草履の裏面(地面と接する面)を見てみると一目で分かります。
左の草履は◯で囲ったところを開いて花緒を調節することができます。
対して、右の草履は裏を開くことができない構造になているため、後からの調節もできない草履です。
お持ちの草履はどちらのタイプか見てみてくださいね。
台の形を選ぶ
草履の台の形に違いがあること、ご存知でしたか?
大きく分けて、台は「小判型」と「舟型(細型)」の2種類が挙げられます。
画像右の長細い台が舟型、左の太めの楕円の台が小判型です。
舟型の草履は細身でスッキリとした足元に見えるので、よく見られる台です。
ですが、近年はより足を乗せる面積が広く、安定が良い小判型の台を選ぶ方も増えてきました。
着姿、安定など、ご自身の草履の履き慣れも考えて選ぶといいですね。
TPOを考える
草履を選ぶときの基本と言ってもいいのがTPOです。
草履におけるTPOはおおむね「フォーマル(礼装用)」と「カジュアル(普段遣い用)」の2種類に分けられます。
主にフォーマル草履は金銀の花緒に、金・銀・白の台が代表的です。
対して、カジュアル草履はデザインや素材の幅がかなり多様になります。
画像でいうと右がフォーマル草履、左がカジュアル草履にあたりますね。
その草履を履いていく場が改まった場なのか、遊びであったりくだけた場なのか、状況に相応しい草履を選びましょう。
↑のブログで草履バッグのフォーマル~カジュアルでの気になる「きまりごと」やさまざまなカジュアル草履をまとめています。
履いた後のお手入れと保管方法は?
着物を着終わった後、着物はお手入れに出しても草履のお手入れを忘れていることはありませんか?
雨や雪の日はもちろん、晴れた日であっても使用後は汚れているものです。
履いた後の適切なお手入れと正しい保存で、草履の長持ち度は変わっていきます。
固く絞った布で底を中心に拭く
まずは全体の汚れを除くために水拭きしていきます。
底の部分は地面と接していて特に汚れが付きやすい部分です。
天候の悪いときや、底に凹凸があるタイプの草履の場合は、砂利や土などで汚れている場合もありますので、しっかりとチェックし除いていくことが大切ですね。
そうなってしまう前に早めに交換したいですね。
底を上に向けて陰干し
全体を拭いたら、直射日光が当たらず、風通しの良い場所で草履を裏返して干します。
時間としては、4、5日くらい置いておくと良いでしょう。
だから、底の部分は特にしっかりと乾燥させることが大切です。
保管は通気性に気をつけて
お手入れが終わった草履を、買ったときのようにナイロン袋と箱に入れて保管している方はおられませんか?
実はそれ、NGの保管方法なんです。
草履を保管するときに大切なのは、湿気がこもらないようにする通気性。
ナイロンの袋に入れると密閉されてしまい湿気がこもってしまうため、買ったときのようにきちっと入れたい気持ちはぐっとこらえ、そのまま箱に入れて保管しましょう。
目立つ汚れや気になるところがあった時は
草履を履いて歩いていると、どこかに擦ってしまって汚れが…ということがあると思います。
そんなときお家でできる応急処置についてです。
草履の台の材質によってやり方が異なりますので、お持ちの草履はどんな材質の草履かよくご確認してくださいね。
革(本革、合皮)素材
→市販の革靴用クリーナーで軽く磨く
帆布素材
→食器用中性洗剤など弱めの洗剤で軽く拭く
汚れを見つけたら職人に見てもらって確実な対処をしてもらうのが一番安心ですね。
草履が痛いから着物を着たくない、はもったいない!
というのも、振袖が着物とのファーストコンタクトである方がとても多いんです。
はじめて着物を着たときの印象というのは、何年経っても後を引いていきます。
第一印象で「草履がキツい、痛い」という記憶が残ってしまって、その後も着物に対して苦手意識を持ってしまうケースも多いんです。
ですが、せっかくの日本の伝統衣装を苦手になってしまうのはもったいないですよね。
細井先生は「草履=痛い」というイメージを払拭して着物を着たことを良い思い出にしてもらえるよう、毎年100人以上の新成人のお嬢様の草履を直し続けています。
今まですげた草履は20万足を超えるんだそう。
初めての草履の印象は、その後の着物の印象にもつながるんですね。
記事を見て頂きありがとうございます。
他にもきもの永見公式HPやきもの永見インスタグラム、公式ツイッターにも写真や情報を載せておりますのでこちらもチェックをお願いします。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。