さて、過去のきもの永見ブログでもたびたびお声がけをしてきましたが、皆さま、着物の保管は正しく出来ていますか?
今回は、湿気やシミから着物を守る「きもの豆知識」をご紹介します。
目次
着物専用の収納用紙「たとう紙」
「たとう紙」って?
たとう紙は着物を収納する専用の包み紙です。
呼び方は地域によってさまざまです。「たとうし」「たとうがみ」といった名前から、「文庫紙」「ぶんこし」または「ぶんこがみ」などなど…まだまだいろんな呼び名があります。(ところによっては同じ「たとう紙」という呼び名で、懐紙や衣裳敷のことを指す場合もあります)
この記事では「たとう紙」という名前に統一してご紹介いたします。
たとう紙の役割は主に①防カビ ②防チリ・ホコリ ③防シワです。
①防カビ
たとう紙はその名の通り紙製ですので、吸湿性に期待ができます。タンスやクローゼットで湿気がこもってしまうとカビの原因になるので、湿気を吸ってくれるたとう紙に包んでおくと安心です。
②防チリ・ホコリ
タンスやクローゼットにしまっておいても、少しずつ溜まってしまうのがホコリ類。たとう紙に包んでおくことで着物に直接、チリやホコリが積もるのを防いでくれます。
③防シワ
着物をそのまま重ねたり、畳んで紙袋などに入れておくと、どうしても余計なシワが付いてしまいがちです。一枚ずつたとう紙に包むと、着物同士を重ねてもシワがつきにくくなります。
和紙・洋紙…より適するのは?
前項でご説明したとおり、たとう紙は紙でできていますが、その紙には和紙製のものと洋紙製のものがあるんです。
では、和紙と洋紙の違いとは何でしょうか?
また、たとう紙として使うならより適するのはどちらなのでしょうか?
和紙とは
楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)などの木を原料とします。長い繊維を絡めるように漉いて紙にしていくため繊維同士の結合が強く、保存性が高くなります。
洋紙とは
パルプ(植物や木材から繊維を抽出したもの)を原料とし、繊維を短く刻んで、様々な薬品を調合して製紙していきます。インクの乗りが良く印刷に適しますが、薬品を使って繊維の結合をしているので、和紙よりも劣化は早くなります。
このような違いがある和紙・洋紙ですが、たとう紙として使うなら和紙がオススメです。
洋紙は印刷のため短い繊維が隙間なく敷き詰められ、表面がツルッとしているのに比べ、和紙は長い繊維が絡まってつながっているため隙間ができ通気性が良く、表面がザラッとしているので着物が中で滑りにくいのです。
よく、着物をクリーニングに出すと新しいたとう紙に入って帰ってくるのでそのままタンスにしまってしまう…という方をお見かけします。
しかし、クリーニング後に付いてくるたとう紙は洋紙製のツルッとしたタイプのことも多いので、もし洋紙製のたとう紙だったときは改めて和紙製のたとう紙に入れ替えると着物長持ちの秘訣になりますよ。
たとう紙が着物に与える影響
湿気ったたとう紙は危険?
着物に携わる人の間に「湿気は着物の天敵」という言葉があります。
皆さま、久しぶりに着物を開けてみると、まだ一度も着ていない着物だったのにカビが生えていた!なんてことはありませんでしたか?
実はそれ、たとう紙のせいかもしれません。
何年も使い続けたたとう紙は、たっぷりと湿気を吸って茶色く変色したり、斑点のようなシミが出たり、カビが生えたりします。それがたとう紙だけにとどまっていればよいのですが…
着物に移る場合があるんです!
そうなってしまうと、せっかくキレイに保管していた着物にも、まだ一度も袖を通していない着物にも、たとう紙から移ったシミ・カビが沈着してしまいます。カビ取りなどでクリーニングに出すと追加料金がかかったり、シミを取り切れない、ということにもなりかねません。
あなたのたとう紙もチェック!
最後にたとう紙を取り替えたのはいつか、覚えておられますか?
また、たとう紙を取り替えたことがありますか?
「着物を買ってから30年同じたとう紙を使ってるわ」という方も、中にはおられるのではないでしょうか。実はたとう紙には安心して使って頂ける年数があり、一般的な和紙たとう紙で約1~2年といわれています。
この年数を過ぎると和紙の吸湿性に劣化が始まり、シミ・カビのリスクが高まってきます。
ぜひ一度、お家のタンスを開けて、着物とたとう紙の状態を見てみてください。たとう紙に茶色い変色や斑点状のシミがあったら、替えどきです。梅雨明けの湿気が収まってきた頃に取り替えてあげると、梅雨で溜まった湿気も一緒に払うことができます。
更に良い環境を整えてあげるなら
着物をしまっているタンスに樟脳(しょうのう)や防虫剤を入れている方も多いと思います。でも樟脳(しょうのう)や防虫剤は半年や数ヶ月に一回、取り換えが必要で、少し面倒くさいですよね。
そこできもの永見がオススメしているのが「備長炭シート」です。
抗菌・防湿・調湿の役割を一手に引き受けてくれる優れもので、何より、取り換えの必要がないんです!多湿の時期に湿気を吸い取り、乾燥した時期には吸った湿気を放出してくれるため、「吸湿」ではなく「調湿」、取り換えの必要なく、長くお使い頂けるわけです。
上記の記事では、「備長炭シート」を始めとして着物の保管に関するぜひ知っておいてほしいことをまとめています。
着物の管理や保管でお悩みの方はぜひご一読くださいませ。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。