はじめて着物を着る方や、久しぶりに着る方などから、着物を着るのに必要なものについてご相談を受けることがよくあります。

このようなお悩みをお持ちの方に必見、今回は着物を着る時に必要な道具について、画像つきで説明していきます。
目次
どんな格の着物・帯を着るのかによりますが、普段着として着物を着る場合には以下のものを揃えましょう。
着物を着るときに必要なもの(見えるもの)
着付けに必要なもの(見えるもの)
・帯
・襦袢
・半衿
・足袋
・草履
≪お太鼓結びのとき≫
・帯揚げ
・帯締め
着物を着るときに必要な道具・小物
着付け道具・肌着
・伊達締め
・衿芯
・帯板
・和装用クリップ
・コーリンベルト
・肌着・着物スリップ
・補正用タオル
≪お太鼓結びのとき≫
・帯枕
画像つき・着物を着るときに必要なもの(外から見えるもの)
着物
着物とは着物を着る際の大部分を締める服のことで、和服とも呼ばれ、日本の民族衣装です。着物を着る際には必要不可欠なもののひとつです。
TPOに合わせた着物の格着物には格というようなグレードのようなものが存在し、着ていく場所やシチュエーションによってはTPOを意識したふさわしい格の着物を着ることが求められます。
TPOに合わせた着物選び
◆着用シーンに合わせた着物選びについてはこちらの記事をご覧ください
着物のサイズ
洋服にサイズがあるように着物にもサイズがあります。「寸」や「尺」を使って表記されることもありますが、最近ではセンチで表記されることも多くなってきています。
着物は洋服と違い、多少大きさの違いがあっても着用することが可能ですが、それでもやはり自分に合った着物を着用するほうが綺麗に見えます。
例えば、下の画像のように手の平を覆うぐらいだと、長すぎる印象になります。
◆自分に似合う着物のサイズについてはこちらの記事をご覧ください
帯
着物には格がありますが、帯にも格があり、選ぶ帯によって着物の格も変わってきます。着物と帯の格があべこべになってしまわないように注意が必要です。着物初心者にとっては帯締めや帯枕のいらない半幅帯がおすすめですが、フォーマルな着物には名古屋帯以上のグレードで帯結びをする必要があります。
例えば、画像の着物は既婚女性の第一礼装の黒留袖です。黒留袖に合わせる帯は、金糸・銀糸などを使用した格調高い柄行の袋帯です。おめでたい事が重なるように二重太鼓で結びます。
◆実際にお客様がお持ちの着物と帯で、コーディネートのお手伝いをさせてもらった様子がこちらの記事です。
襦袢
長襦袢は、着物の下に着る薄い着物のようなものです。この襦袢に半衿を着けることで、着物を重ね着しているように見せることができます。襦袢は着物の袖の間からチラリと見えるものです。このチラリと見える襦袢にこだわるのも、着物の楽しみのひとつです。長襦袢の半衿は、長襦袢の襟の部分に縫い付ける付け衿のことです。
長襦袢を準備する際の注意長襦袢を準備するときは、まず半衿が付いているか、また汚れていないかを確認してください。
長い間着ていなかった長襦袢の中には、皮脂やファンデーションなどが黄ばみや汚れとなって出ているものがあります。着付けを頼む美容室に持ち込みをしたら半衿が付いていなかった、ということもお聞きしますので、長襦袢を準備するときは半衿にも注目することをおすすめします。
襦袢には着物より少し小さいくらいの長襦袢、上下に分かれている二部式襦袢、半襦袢などがあります。フォーマルな着物を着る際には長襦袢を着るのがよく、長襦袢と比較して簡単に着られる二部式襦袢や半襦袢はカジュアルな着物を着るのにピッタリです。
半衿
襦袢につけ、着物の衿もと、首部分に重なって見えるのが半衿です。
襦袢には地衿といって衿がついています。半衿には地衿を保護する役割、衿もとをパッとおしゃれにする役割があります。
半衿は地衿に縫いつけて使います。縫いつけ方にはすこしコツが必要なので、フォーマルな場所に着ていく場合には前もって練習しておくほうがよいでしょう。
一般的には白い半衿を着けますが、刺繍のたくさん入ったものや柄のものもあり、着物の種類自由に選ぶことが可能です。
特に振袖などで華やかな刺繍の半襟を付けられる方は多いです。
足袋
和装の時の靴下のようなものが、足袋です。一見同じように見える白い足袋にも、様々な種類が存在します。実は着物を着るシチュエーションや着物の格によって、使い分ける必要があります。基本的には礼装、ハレの場には「白足袋」と覚えておきましょう。自分にピッタリのサイズの足袋を履くのが綺麗に見える秘訣です。
足袋の素材にもさまざまな種類があります。白足袋の中で最も一般的なのが綿の足袋です。生地の一部または全部に化繊が用いられてるストレッチ足袋はその伸縮性が特徴です。ストレッチ足袋は足袋を履きなれていない人や外反母趾などの人におすすめです。絹製の足袋は婚礼衣装などの特別なときに履くことがあります。
素材の他にも足袋が脱げるのを防ぐ役割を持つ「こはぜ」の数にも違いがあります。フォーマルな場合には素肌が見えないほうがふさわしいので、少し丈の長い5枚のこはぜの足袋が好ましいです。
普段着としてカジュアルに着物を着る場合には立つ・座るという動作がしやすい4枚のこはぜの足袋がよいでしょう。
また、白足袋の汚れ防止用として、カバー足袋という足袋の上から履くカバー用の足袋もあります。ストレッチ性のある素材で作られているので、簡単に履くことができます。
◆足袋の選び方が気になる方には、こちらの記事で詳しく説明しています。
草履
草履は洋服でいう靴のようなもので、台と鼻緒からできています。履いた時にかかとがすこしはみ出すくらいの大きさが、ふさわしいとされています。
草履台の高さは高いほどフォーマルにふさわしく、礼式用の着物には5~6センチ、普段用のカジュアルな着物には3~5センチくらいのものがよいとされてます。
色もバリエーションに富んでいます。金や銀がメインの草履はより格式高いものとされていて、フォーマルで着用します。フォーマル用に着る際には草履台と鼻緒のデザインが似ているものを選ぶ方がよいでしょう。
おしゃれ着や普段着の場合には草履台と鼻緒の素材やデザインが違うものを選ぶことも着物をきる楽しみのひとつです。
◆痛くなりにくい草履の履き方について、こちらの記事で詳しく説明しています。
帯揚げ
帯揚げとは、帯の上部を飾る布のことを指し、お太鼓結びの際に使用する帯枕を隠し、帯結びの形を整える役割があります。また、おしゃれとして使われることがあります。
着物の格やシーンによって、素材・柄・色を使い分ける必要があります。素材は無地のものからぼかし染め、刺繍の入ったものなどいろいろな種類が存在します。
帯締め
帯締めは帯の中心に巻かれている紐のことで、お太鼓結びの際に帯を引き締めて固定するという役割があります。さらに、華やかさをプラスするアイテムとしても役に立っています。
帯締めの種類には丸くげと組紐の二種類があります。組紐は組みあがった紐の形によって、平組・丸組・角組と大きく分けて3種類に分けられます。フォーマルな場面には組紐が主流です。一方で、丸くげはカジュアルな場合に用いられます。
▼フォーマルな場面で用いられる帯締め。金・銀が入ったものが多いです。
▼カジュアルな場面で用いられる丸ぐけの帯締め
結び方は基本的なものからアレンジされたものまで、結び方で印象を変えることが可能です。
画像つき・着物を着るときに必要な道具・小物
腰紐
着物を着るときに丈の位置を決めて、着物を締める紐のことを「腰紐」と呼びます。伊達締めをする前、補正タオルを巻く際に使います。腰紐を正しく使うことで、着崩れを防ぐことができます。
紐の数は何本必要?通常は着物用に2~3本、長襦袢に1本と仮止め用に1本の合計5~6本あれば良いでしょう。体型や着付けをする人によって使う紐の数は変わりますので、美容室で着付けをお願いする際などは予め何本腰紐が必要かを確認しておきましょう。
腰紐は正絹、化繊、モスリン(ウール)、ゴム製などの素材があります。素材によってメリット・デメリットがあるので、しっかりと特徴を知っておく必要があります。
・正絹の腰紐は着物との馴染みもよく、よく締まります。価格とお手入れが少しネックです。
・化繊の腰紐は価格とお手入れのしやすさが人気ですが、他の素材に比べ滑りやすく、結び目がときにくいというデメリットもあります。
・最も人気が高い素材がモスリンの腰紐です。締まりすぎず、ゆるみも少ないです。また価格も安く、お手入れもしやすいのも特徴です。
・ゴム製の腰紐は伸縮するのが特徴です。他の腰紐と比較して、結び目が目立たず、簡単に着付けることが可能です。しかし、慣れるまでに時間がかかることもあります。
伊達締め
伊達締めは幅が10~15センチ程ある紐のような物で、衿が浮くのを押さえるために使います。腰紐と同じように着崩れを防ぐ効果があります。長襦袢と着物との両方で計2本使います。
①の伊達締めは正絹製のものです。化繊に比べ、値段が高いですが正絹はどんな着物でも馴染みがよく、しっかりと締めることができます。中でも「博多織の伊達締め」が人気です。
②の伊達締めは化繊のものです。こちらは値段の安さから購入しやすいですが、滑りやすいというマイナス点もあります。
③マジックテープで固定する伊達締めです。マジックベルトの伊達締めは簡単に締めることができ、伸縮性もあります。着崩れを直すことも簡単にできるのが特徴です。ただし、マジックベルトの硬い部分が着物の生地を傷つけないように注意が必要です。
衿芯
衿芯は長襦袢に縫いつける「半衿」の中に通し、衿もとを綺麗に見せます。衿芯にまっすぐなものと湾曲している2つのタイプがあります。
素材もしっかりとした厚い衿芯、しなやかに並ぶ衿芯、メッシュの衿芯など様々なものがあります。三河芯(みかわしん)という布が張り付けてる長襦袢には衿芯を通す必要はありません。入れるのに少しコツが必要なので、練習するとよいでしょう。
帯板
帯板は帯がしわにならないように、帯の前側に入れ込む板のようなものです。「前板」と呼ばれることもあります。
多くの帯板の場合、熱めのボール紙で板状の物に、布地が張り付けられています。帯板には長さ、幅などさまざまな種類がありますが、使うシチュエーションで決めるとよいでしょう。
帯板を選ぶ際の注意フォーマルな着物を着る場合には長い帯板が向いています。一方で、短めの帯板はカジュアルな着物に向いていると言われています。ただし、体形によっては長すぎるものを使用すると、脇に当たってしまう場合もあります。胴の両側脇より少し短いものを選ぶとよいでしょう。
多くの帯板の幅は10~15cmです。留袖や訪問着などフォーマルな着物を着る際には帯幅を広めにとることで華やかにすることができます。フォーマルな着物を着るときには、幅広の帯板を使うとよいでしょう。名古屋帯や半幅帯を使う場合には、帯からはみ出ないように幅が狭めの帯板を使うとよいでしょう。
着付けが初心者の方にはバンド付きタイプの帯板もあります。あらかじめバンドで胴に留めておくことで、簡単に帯結びを行うことができます。
また、夏場に適したメッシュ素材やへちま素材の帯板があります。
暑い時期に使うのが一般的ですが、素材が薄いことから通気性もよく、優しく締めることも可能です。また、浴衣の半幅帯の時に使うのも最適です。
和装用クリップ(着物クリップ)
和装用クリップ(着物クリップ)は襦袢と着物を留め、衿もとや帯結びを綺麗に整えるクリップです。着付けに必ずしも必要というわけではありませんが、あると便利なアイテムです。特大、大、中、小と幅広いサイズが販売されていますが、カジュアルに着物を自分で着付けたい場合には「大」を一つ購入しておけばいいでしょう。
洗濯ばさみを和装クリップとして使用する方もいらっしゃいますが、着物に跡がついてしまったり、着物を痛めてしまったりトラブルが生じる場合もあるので、着物クリップを購入したほうがよいです。
コーリンベルト(着付けベルト)
コーリンベルト(着付けベルト)は衿が開いてしまうといった着崩れを防いでくれるアイテムです。必ずしも必要というわけではありませんが、着付け初心者にはあると便利なアイテムです。訪問着等の重ね衿(伊達衿)が崩れにくかったり、衿の折り目をキープできたりといったメリットがあります。
商品を開発したメーカーの名前のコーリン社から名前がきているため、別会社のものは「着付けベルト」「着物ベルト」と呼ばれることもあります。
肌襦袢(肌着)
肌襦袢(肌着)は洋服でいうキャミソールのようなもので、汗を吸い取ってくれるという役割があります。長襦袢(半襦袢)・着物が地肌につかないので、着物を綺麗に長く着用することができます。
肌襦袢はワンピースタイプのものから肌着と裾除けで上半身用と下半身用に分かれているものがあります。どんな着物を着るときでも基本的には同じ肌襦袢を使うことができます。自分に合ったものを購入すればよいでしょう。
補正用タオル
補正用タオルとは着物の着姿をより綺麗に見せるために使うタオルのことです。身体の凹凸が少ないほうが綺麗な着物の着姿といわれているため、くびれや腰などの凹凸をなくすためにタオルを当てます。
体つきによって必要な枚数は異なりますが、カジュアル着であればフェイスタオル1~2枚あれば足ります。普段から使っているタオルを使用するのでも問題ありません。もしも、着物を着る機会が多い場合には専用のタオルを用意しておくとよいでしょう。
和装用ブラ(着物ブラジャー)
洋服のブラジャーと違い、和装用ブラ(着物ブラジャー)は胸の凹凸を押さえることができます。必ずしも必要というわけではありませんが、着物姿にこだわりたい!という方は用意したほうが着姿をより美しくすることができます。
帯枕
帯枕はお太鼓結びをする際に、帯の形を作る土台として使用します。
帯枕を選ぶ際の注意帯枕の大きさ、形には様々な種類があります。フォーマルな着物を着る際には大きくて厚みがあるタイプの帯枕を使うとよいでしょう。20代30代の女性であれば、華やかさを出すために厚めの帯枕を購入するのがおすすめです。
落ち着いた印象にしたい場合、年齢に関わらずカジュアルな普段着としてきものを着たいという人には、小さくて薄い帯枕がおすすめです。小さくて薄い帯枕を使うと、小さめで平たいお太鼓結びができます。
帯枕には「紐タイプ」と「ガーゼタイプ」がありますが、好みによるので、自分が気に入った帯枕を選ぶとよいでしょう。
おわりに 着付けに必要なもの一覧と準備の際の注意点
着付けに必要なもの一覧
・帯
・襦袢
・半衿
・帯揚げ
・帯締め
・足袋
・草履
・腰紐
・伊達締め
・衿芯
・帯板
・和装用クリップ
・コーリンベルト
・肌着・着物スリップ
・補正用タオル
・帯枕
上記の一覧を準備する前にいくつかの注意点があります。
腰紐・コーリンベルト・伊達〆の必要な数
伊達締めの金具の有無、補正に関すること(タオルの枚数など)
このあたりの数は体型や着物の長さ、着付師さんの着付けの仕方によって変わってきます。
お願いする美容院さん・着付師さんにあらかじめ何がどれくらいの数必要かを事前に聞いておくとよりスムーズに準備が進められます。
こうした着付け道具のリスト一覧は名称だけ見てもなかなか実物と結びつかないことも多いかとは思います。
どういった道具かわかりにくいものに関しましてはこのブログの画像つきの説明を見ておかれると、イメージがしやすいですよ。
▼振袖の着付けに必要な道具についてはこちらの記事をどうぞ。


written by TAKAHASHI
文化学部卒業後、和文化に興味を持ち地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。