着用シーンと季節のきもの。わかりやすく解説致します。
少し前は『嫁入り道具として一通りの着物を準備して嫁に行く』というような時代もあり、タンスの中に何枚か着物が入っている方も多いと思います。
タンスの中に着物が入っているけど、着たことない。
という声もあったり…。
しょんぼりしてしまいます。
結婚され、お子様が誕生されると お宮詣り・紐落とし七五三・卒入学…。
通過儀礼などで着物を着るチャンスもありますよね。
TPO に合わせた着物の選び方は別記事から
着付け教室の生徒さま方のお話を聞くと、子育てが一段落してきて着物を着たくなった方々も多いですね。
着物でお出かけしてみたいけれど、持っている着物がどの時期に着るのにふさわしいのか分からなくて迷うというご相談もあります。
まず皆様が感じておられる不安を払拭することが先決!と考えお悩み解決致します。
目次
シーズンごとの着物の種類
着物はシーズンごとに
【袷(あわせ)】【単衣(ひとえ)】【夏物(薄物)】
と大きく分けられます。
日本には美しい四季があります。文化的で風情溢れる四季・季節に合わせて衣類を変えていく『衣替え』についてです。
ざっくり分けると
◉寒い時期は裏地の付いた【袷(あわせ)】
◉真夏は【絽(ろ)】【紗(しゃ)】【麻】【綿(浴衣)】【セオα(セオ・アルファ)】【芭蕉布】など、夏物(薄物)と呼ばれる夏用の生地。他にも産地の名前で呼ばれる【夏大島】や【夏結城】【夏牛首】などもあり、絹物でも様々な夏物があります。
◉春や秋は袷にする生地で裏地を付けない【単衣(ひとえ)】
◉夏物の前後に着る【紗袷(しゃあわせ)(紗と絽または紗と紗を重ねて一枚として仕立てた着物)】
(例外も多数存在します)
着物の衣替えの暦
基本編
10月~5月 袷着物
6月、9月 単衣着物
7月・8月 夏物(薄物)
↑の暦は数十年にわたり、ずっと言われ続けてきています。
もちろん、この通りに着用すれば 問題ないです。
…が、しかし!
昔と違い、今は年間通して気温が上がっています。
特に《春》《秋》は暦を信じて、この通りに着用すると暑くてたまらない…ということにもなりかねません。
実際、近年9月も最高気温が30度を超える日々が続いています。
真夏のような気温の中では素材は当然夏と同様なものほうが着ていて楽に過ごせます。
ただし、9月になると陽は傾いてきますし、虫の声も聞こえてきたりと秋を感じますので、着物の絵柄や色合い・コーディネートなどを秋に近づける工夫をすると良いでしょう。
今時の着物雑誌や着物業界でも少しづつ変化が見られます。
5月~10月までの半年間着られる素材の着物など見かけるようになりました。
基本を前提にしつつ自分の体感温度と体調で見極めることが大切ですので、まずは基本をマスターしましょう。
仕立て方の違い
着物の仕立ては大まかに二種類あります。
【袷着物】と【単衣着物】
付属品・仕立が違います。
袷着物
胴裏(どううら)と八掛(はっかけ)という裏地が付き、表地とピッタリ狂いなく仕立てます。
これは仕立屋さんの技術のなせる業です。
単衣着物
裏地は付かず、背縫いの縫い代に付ける〔背伏せ〕と広衿の場合は衿裏、お好みで腰回りを保護する〔居敷当(いしきあて)〕があります。
夏着物
単衣仕立で生地質がいかにも涼しそうな着物とお考え頂ければよろしいかと。浴衣も単衣着物ですが背伏せは付けません。
↑絽
↑紗(写真は紋紗(もんしゃ)織柄があります)
↑綿
↑セオ・アルファ
絞りの浴衣も半衿をのぞかせると夏着物として着られますね。
最近急増中の「胴抜き仕立て」
例外として、ご参考までに 「胴抜き」と呼ばれる裾廻りの八掛(はっかけ)だけがついて背中は単衣(ひとえ)の着物もあります。
着用すると袷(あわせ)着物に見えます。
表生地は袷着物に用いる生地を使うことが多いです。背中と袖が単になっているので『胴抜き』なのでしょうね。
温暖化が進み4月・5月・10月でも袷では暑い!というときに活躍します。
(↑写真は内揚げから八掛まで胴裏を付けていますが、胴裏を付けない仕立て方もあります。)
こうして着物を見てみると季節がわかりやすいと思います。
ご参考までに、私はその日の最高気温を一つの目安にしていて、
◉23度を超えると単衣
◉28度を超えると薄物
という風に気温に合わせて選んでいます。
(7・8月以外は透けないように墨黒などの濃色の長襦袢を下に着ます。)
これは太田個人の基準ですので、皆様の体感に合わせてお選びいただくのが良いと思います。
着物以外での寒さ対策
袷の時期でも寒い日は、道中に着るコートやストールはもちろんですが…
◉温かインナーの肌着
◉足袋インナー
◉アームカバー
などで寒さ対策をしています。
私は極端な寒がりなので寒さ対策は万全を期しますが、体感温度は人それぞれなのでご自分に合わせて柔軟に考えられた方が良いと思います。
暑がりの方で真冬でも単衣着物しか着ないという方もいらっしゃいます。
春や秋の汗ばむ日には袷着物に夏物の長襦袢を着るなどして暑さ対策をします。
着物をより楽しく着るために
「暦通りにしていない」=「着物を知らない人」ではないのです。
暦を知って理解したうえで、臨機応変に着心地よく着られるほうが着物をより楽しめると考えています。
但し、お茶会など師範の先生から指示がある場合は、先生の指示に従ってください。
例外として~真夏のフォーマル~
夏物でご紹介したように7月・8月の盛夏の時期のフォーマル着物は、絽や紗などのの訪問着や色無地になります。
ですが、結婚式などフォーマルな席で室内のみ(式場内での着付けが前提)の場合、留袖や振袖など袷着物を着用される場合もあります。
結婚式のスタイルにもよりますが花嫁さんが和装を着装されるなら冷房がしっかりと効いています。
その時は襦袢などの涼しい工夫をお忘れなく。
季節ごとの帯
帯については、夏用の【絽(ろ)・紗(しゃ)・羅(ら)】などの明らかに透けている織り方以外のものは袷(あわせ)着物・単衣(ひとえ)着物の時期にお使いいただけます。
↑変り織りの夏物 染め名古屋帯
↑芭蕉の八寸名古屋帯
(写真は夏物です)
例外もありますので分かりにくいものは、きもの永見へご相談下さい。
おまけ
「8月末に食事に行くんですけどこの着物(袷の訪問着)を着て行こうと思ってます。」
と、着物を着ることを楽しみにしておられたことがありました。
着物は、暑くなったから一枚脱ごうというわけにはいかないですよね。
外出先で困らないようにお選びいただくと良いかと思います。
朝夕が冷える季節はショールなど、一枚プラスされると安心ですね。
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written by A.OTA
きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/