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和文化

近江上布と秦荘紬┃滋賀県の織物について聞いてみました。

着物の産地は日本全国に沢山ありますが、皆さまはどこの産地が思い浮かびますか?

特に紬織物は産地特有の個性ある織物が全国にありますね。紬といえば大島紬や結城紬が代表的ですが、どちらの紬も見た目も手触りも全く違います。どちらもそれぞれの特徴に良さがありますね。

その全国の紬を自ら産地に赴き買付をされる「キタヤマ美装」の北山先生に織物のあれこれを聞いてみました。

北山先生
よろしくお願いします。

今回は『滋賀県』に注目しました。

滋賀県の織物

滋賀は天然素材三産地と呼ばれている地域があり、いずれの産地も強撚糸を用い独特の凹凸がある縮織・シボ加工が特徴です。

滋賀県といえば 日本で一番大きな湖「琵琶湖」があります。さらに周りを比叡・鈴鹿など様々な山々に囲まれています。

この自然に恵まれた文化・風土が綿・麻・絹の天然素材を育んで来ました。代表的なものには綿素材の『高島ちぢみ』、麻素材の『近江ちぢみ』そして絹織物の『長浜ちりめん』があります。

その滋賀の織物の中でも 『近江上布』『秦荘紬』 に焦点を当てて、掘り下げます。

上布とは

上布とは

上布とは、江戸時代 藩や江戸幕府への上納品として用いられたことから名付けられたといいます。

麻の繊維で織られた織物です。上布の産地としては【越後】【能登】【近江】【宮古】【八重山】があります。

上布に使われる麻の種類は、炊いて柔らかくした後に手で繊維を細く裂き糸にした『苧麻(ちょま)』と、麻を細く裁断して糸を作る『ラミー』があります。

麻の繊維は1メートルくらいの長さなので繋ぎ合わせて糸にします。このつなぎ目が熟練の技によりほとんど分からないように仕上げられます。

『苧麻(ちょま)』とは九州・沖縄地方の呼び名で、本州では『からむし』と呼ばれています。

単衣で仕立てられ、夏物として着用されます。

A.OTA
麻はシワになりやすいですが、自然なシワも麻織物の魅力の一つでしょう。水に強いので水洗いが可能なところも良いですね。

 

近江上布とは

琵琶湖の東岸、遠く鈴鹿山脈からの清らかな水に恵まれた地に育まれた織物です。

近江の麻布の起源は、宝徳元年(1449)高宮布として生産され、神宮や幕府へ献上されました。

近江上布は裁断した麻糸を使用した織物です。文献によりますと、古くは弘治元年(1555)金剛輪寺の「下用帳」に、また多賀大社所蔵の文献には豊臣秀吉に献上した際の礼状があるとされているように古くから生産され、江戸時代には彦江藩主・井伊家からも生産を奨励されました。

織物は時代の推移と共に白布から縞や藍染などができるようになり、一般の着物として着用されるようになりました。

機織りの技術は京都・太秦より職人を招いた秦氏がその技術を習得し琵琶湖周辺の気候風土とも合い、産地として形成されました。

織物は白から縞へ、また絣へと発展し、嘉永年間には板締め絣が発明され、括り絣と板締め絣の藍染絣が生産され、櫛押し絣とともに天明年間には「天明絣」として農家の副業ととなり、安定した地場産業として、年間百万反の生産量があったとされています。

それらが近江商人によって全国へ広がったと伝えられています。

紬とは

紬とは

蚕の繭を真綿にしたものから糸を引き、先染めして平織りで織ったもの。

例外も多数存在し、白生地の紬地に後染めを施す「牛首紬」や生糸(繭から引いた糸)を使用する「大島紬」などあります。

秦荘紬とは

↑絣を用いた秦荘紬

↑先染め糸を用いた無地の秦荘紬

養蚕の技術を習得した頃、春秋には養蚕・冬には機を織り農業とともに機織り・養蚕を生業として衣類を自給自足で賄うようになりました。

良い繭は売りさばき、余った繭は自家用に紡ぎ、糸にならない屑繭は真綿にして綿入れなどに使いました。庶民が綿の着物を着る時代に、紡いだ糸で織り上げた「お蚕さんの着物」を密かに着たと聞きます。

大正から昭和の初めにかけては、農家の女性は自ら機織りをして織り上げた着物を、嫁入り支度に用意したと伝えられており、秦荘紬の始まりと言われています。

 

北山先生
近江上布で培われた絣のノウハウを絹織物に転用したものが秦荘紬です。
A.OTA
近江上布あっての秦荘紬ですね。

特徴

近江上布 は吸水・発散性に優れ、使うほどに風合いが良くなり、お肌に大変優しい素材です。麻というと固くてシワになりやすい夏の素材というイメージがありますが、麻の中でもしなやかさが特徴の素材です。

滋賀県伝統工芸品の指定を受けています。

秦荘紬 は近江上布の優れた技法を真綿紬糸に取り入れ、丹念に織り上げた絣糸です。絣染めの手法も様々ありますが、秦荘紬で独特なのが『櫛押し捺染(くしおしなっせん)』という技法です。お召しになればなる程、肌になじんだ風合いになります。

北山先生
この秦荘紬の織元は、50~60年くらいまえは300軒くらいあったと言われていますが、現在では一軒だけになってしまいました。秦荘紬が途絶えてしまわないように、織元に行くと予定以上に仕入れてしまいます。

今では機械織りの紬が多く出回っている中で、秦荘紬は手機で丹念に織り上げられる数少ない 手織りの紬
です。

近江上布も経緯絣の柄を織っているところは一軒だけですね。

A.OTA
今までに、近江上布をお買い上げされたお客様の想い出などがありますか?
北山先生
呉服・洋服・宝石・靴など様々な業種合同の大きな展示会でのことでした。

洋服のお店に誘われて来場されたお客様が、近江上布の経緯絣を見た瞬間に気に入られ、目的の洋服のコーナーに行くまでにお買い上げされたということがありました。洋服の担当者は何とか自分の洋服コーナーまで連れて行こうと一生懸命でしたが、「私、着物も着るのよ!」と近江上布の魅力に釘付けだったことが思い出されます。

A.OTA
好きな人は、見た瞬間に引き込まれますもんね。

麻織物の近江上布は、見た目にも軽やかでしなやかな風合いが魅力です。

↑近江上布に依智秦上布の八寸名古屋帯

A.OTA
私も、今回驚いたことがありました。

実際に販売中、手織りの秦荘紬と機械織りの他の産地の紬とを体に沿わせて比較しておられたのですが、しなやかな風合いの秦荘紬と並べると、その差は歴然でした。

私自身、その差をはっきりと見比べ驚きました。

商品を間近で見ることができ、手にとってみられる環境はなかなかありませんが、展示会など沢山の商品が一同に集まる時は良いチャンスだと思います。

A.OTA
ぜひ、チャンスがあれば沢山の織物を見比べてみてくださいね。

CONTACT

TEL0859-39-1234

10:00-19:00/水曜日

written by A.OTA

きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/

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