きもの永見では、着物の寸法をお客様お一人お一人に合わせて決めています。
専門店として、「当然のこと」と社員全員思っておりますが、ネットの情報など昨今の着物事情を覗いてみると、どうもアバウトになりつつあるようで…。
ご自分のマイサイズをしっかりと納得された上で、少々サイズの合わない着物は着付けのテクニックで着ることが望ましいのではないかと、おせっかいながら思いましたもので…。
着物のサイズ【寸法】
洋服のサイズは様々ありますが、ご自分のサイズはもちろんご存知ですよね。これが着物になると 多くの方は???という感じでしょうか。
「着物にサイズってあるの?」という反応も珍しくない時代になりました。
着物の「サイズ」のことを以下「寸法」と呼びます
単位
和裁の寸法は『鯨尺・くじらじゃく』を使います。そもそも尺という単位も耳慣れないでしょうが、建築関係で使われる『曲尺・かねじゃく』と比べると長さが違います。
鯨尺の一尺は37.9㎝、約38㎝です。
江戸時代にはすでに呉服を測る単位として定着していましたが、東北の方へは普及せず曲尺(一尺=約30㎝)を使用する地域もあります。鯨尺なのか曲尺なのかも確認しないと大きな間違いにつながりますので注意が必要です。
ここでは、鯨尺でお話しします。
単位の小さい方から
厘・分・寸・尺・丈 と、10で次の呼び方に変わります。
例えば 〔 10寸 = 1尺 〕のように変わります。
名古屋帯に八寸名古屋帯と九寸名古屋帯とあるように、呉服業界は鯨尺がなければ成り立ちません。
(※ 八寸名古屋帯=縫い代がなく布端をかがって仕立てます。 九寸名古屋帯=縫い代があるので一寸ほど幅広で、仕立て上がるとお太鼓部分は八寸の帯幅になります。)
反物は一反、二反と数えますが、一反の長さは〔三丈〕が標準です。(現在では三丈物でも実際は少し長めにしてあります。)
どの反物も同じ長さではなく、例えば『色無地』など、三丈物と四丈物で区別しています。
四丈物は振袖や共八掛(表と八掛が同じ生地、別八掛よりも上物とされる)にできます。
着物の主要寸法の部位
各寸法の中でマイサイズのために必要になるのが
【身丈】【肩裄】【前巾】【後巾】になります。
長襦袢と寸法が合うかを確認するときは、【袖丈】も揃っているか確認します。〔長襦袢は着物と同寸または二分(約1㎝程度)控えます。〕
他は和裁の基本寸法や仕立てる際の都合上限定される部位などありますが、体型により加味して決めていきます。
寸法よりも柄合わせを重視する着物
色無地や小紋などはマイ寸法で仕立てますが、着物によってはピッタリサイズに出来ないものもあります。
振袖や訪問着などの絵羽付けの柄(裾模様)の着物は脇縫いで柄が合うように描かれていますので、寸法よりも柄合わせを重視します。
細身の方には身幅が広くなりますが着付けでカバーできる部分なので、あえてそうします。
恰幅の良い方の場合は狭い身幅では裾がはだけるなど不都合なので、柄よりも身幅を重視します。そのような場合は着物をお勧めするときに脇の柄がずれることをご了承いただきますが、柄がずれても目立たない・縫込みの中にまで柄が描かれているものなどを確認しています。
体型による寸法の違い
体格により首・肩まわりの肉付きの良い方は【衿肩あき】や【抱き巾】を広めにするなど、他にも考えたい箇所もあります。
余談ですが、当社の生涯現役の先代社長夫人(以下、大奥さん)は若い頃、大変に肉付きが良く胴回りも大きかったので様々な工夫をして自分の着物を仕立てていました。その一つに身幅を広げる際、『衽幅をほんの少し広げる』という仕立て方でした。和裁の基本では『衽幅は四寸と決まったもの』ですが、大奥さんは着やすさが違うといいます。
体格の大きい方も経験に基づいた強い味方がいますので安心して寸法をお任せください。
小柄な私の経験では、肩裄の長い着物を着ると腕が重く感じ、余計に疲れるように感じます。
子どもの着物
お子様の着物としての寸法は、一つ身・二つ身・三つ身・四つ身と大きさが変わり、肩揚げ・腰揚げで調節します。
反物の幅は子ども用の小さな着物も大人用の反物と変わりません。同じ幅の反物を必要な長さだけ使って仕立てます。
一つ身・・・お宮詣りの祝い着です。祝い着は袖が長くしてありますが、産着としては筒袖など短い袖です。
二つ身・・・浴衣にありますが、子ども着物としてお求めになる方は少なくなりました。
三つ身・・・七五三の三歳用の着物です。
四つ身・・・紐落とし~七五三の七歳用の着物です。本裁四つ身といわれる大きめの四つ身もあります。(本裁四つ身は大人サイズに仕立て替えが出来ます。)
子どもの着物は成長に伴いサイズ変更が手軽に出来るように、肩揚げ・腰揚げをして着ることが前提です。十三詣りも肩揚げをするべきなのですが、最近は背丈の高いお子さまも多いので身長によるところが多くなりました。
小学校の卒業式に袴姿をされる方が増えていますが、小柄なお子さまには肩揚げをして、ピッタリサイズで着せてあげたいところですね。
おまけ
寸法ではないですが、呉服は数える単位にも面白いものがあります。
反物は一反、二反と数えますが、アンサンブル(対服)など着物と羽織を同じ生地で作る目的のものは二反の反物が必要になります。そのような場合に使われる最初から二反分の長さの反物もあり【疋・ひき】という単位で数えます。二反分なので六丈の長さのものを一疋と数えます。
日常生活では覚える必要はないですが、呉服業界では今だに鯨尺の単位が普通に飛び交っていますので、聞こえてきたときに「あ!」と気づけたら面白いかもしれません。
もちろんメートル法に換算してご自分の寸法を覚えておかれると便利だと思いますが、ちょっと知っておくと着物の世界が広がること間違いなしです。
もうひとつ…
匁(もんめ)=尺貫法での重さの単位ですが、パール(真珠)は世界各国で取引される際の基準に匁が使われています。日本の単位が国際基準だなんて、ちょっとビックリしつつ嬉しく感じました。
身長が同じでも、体型・体格により細かく寸法が変わります。ご自分の寸法にご不安のある方、お母様から譲られた着物の寸法のお直しのご相談など、どうぞご遠慮なく きもの永見へご相談ください。
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written by A.OTA
きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/