あっという間に10月になり、涼しく過ごしやすい時期が来ました。
この時期はたんすを開けて、風通しも兼ねてお着物の状態を確認するのに丁度いい季節です。
そこで、たんすにしまってあったお振袖の収納・保管についてのご相談も多く寄せられています。
お振袖は、成人式の大事な思い出の詰まったお着物。そして、これから先卒業式やお呼ばれに着て行ったり、自分のお子様がまた着れるようにきれいに保管しておきたいですよね。
着物の基本的な保管・収納方法
まず、 着物の保管は1枚ずつ和服用のたとう紙に包んでから収納します。
そして たとう紙をたんすにいれて収納しましょう。
ここで着物を入れるたんすですが、きものの保管に最適なのは桐のたんすと言われています。
また、 たんすの上段は湿気がたまりにくいので
振袖のような良い着物や大事な着物は
優先的に上段に入れていたほうが良いでしょう。
着物のたたみ方
わかりやすいように写真付きで説明していきますね。
①着物を広げます
・着物を思い切って広げられるスペースで。
(狭いスペースでも畳めますが、まずは基本に沿っていきましょう。)
・肩は左へ向けます。
・写真のように着物を広げてみましょう。
②手前の脇線(脇の縫い目)で折ります
赤線が脇の縫い目です。
③さらに手前に折り返します
赤線が衽(おくみ)線と言い、この位置には必ず折り目がついています。この線を手前に折り返します。
ポイント
④左右の衿先を合わせます
赤線が 衿~衿先~衽線 です。
③で手前に返した衽の上に、向こう側に残っている同じ形の部分をピッタリ重ね合わせます。
肩に近い衿肩廻りに続きます。
⑤衿を整えます
ここにも元の折り目があります。
・ピンクは衿の真ん中、谷折りの折り目がついています。
・紫は山折りの折り目があります。
・紫と紫を合わせます。
⑥両方の脇線を合わせます
向こう側にある 左脇の縫い目① と 手前にある 右脇の縫い目②を合わせます。
ポイント
↓左右がピッタリと重なるとこの写真のような形になります。
⑦上になっている左袖を向こうに返して見頃に重ねます
ポイント
⑧裾を肩山まで持ってきます
ポイント
⑨ ①~⑧で畳んだ状態のまま、ひっくりかえします
⑨手前の袖を身頃に合わせます
⑪もう一度ひっくり返して もとに戻します
ポイント
⑫身頃の長さに合わせて袖を畳みます
⑬たとう紙(着物を包む紙)に入れます
ポイント
⑭出来上がりです
こちらが着物の畳み方の基本です。
着物は左右対称に縫われていますので、必ず左右対称にたためます。
「折り目正しい」という言葉がありますが、この語源は着物の折り目が正しく畳まれているところからきているのだとか。 折り目に沿ってきちんと折り返らないと、変なところにシワが寄る原因にもなりますが、元の折り目通りに戻していけば大丈夫です。
まれに、間違った畳み方のままタンスで眠っていたお着物は 元の折り目通りという訳にいかない時もありますので、その場合はご相談ください。
着物を長持ちさせるために
上記の手順で着物をしまって安心…というわけではありません。
どんなにきちんとしまっているつもりでも、環境が悪いとすぐに着物はボロボロになってしまいます。
では、どのように環境を整えたら着物をキレイに保管することができるのか、
その方法をお話していきます。
■たとう紙の定期的な交換
お客様からのご相談の中でも、着物を長期間タンスに入れっぱなしにしていて久しぶりに開けたらシミがあった、というものがとても多いです。
その原因のほとんどが、たとう紙のシミがきものに移ってしまったケースです。
何年も使い続けたたとう紙は、たっぷりと湿気を吸って茶色く変色したり、斑点のようなシミが出たり、カビが生えたりします。そこから着物に移ってしまうと、普通のお手入れではなかなか取れないシミ汚れになる可能性もあります。
たとう紙には安心して使って頂ける年数があり、一般的な和紙たとう紙で約1~2年といわれています。
この年数を過ぎると和紙の吸湿性に劣化が始まり、シミ・カビのリスクが高まってきます。
ぜひ一度、お家のタンスを開けて、着物とたとう紙の状態を見てみてください。たとう紙に茶色い変色や斑点状のシミがあったら、替えどきです。
梅雨明けの湿気が収まってきた頃に取り替えてあげると、梅雨で溜まった湿気も一緒に払うことができます。
■湿気対策①虫干し
着物にカビが生える一番の原因は、やはり湿気です。
そこで、きものの湿気を取り除く方法として一番有効だと言われているのが虫干しです。
■湿気対策②たんすの換気
きちんと着物を干すことができればそれが一番ですが、忙しくてなかなか虫干しが出来ない!という方も多いと思います。
そこでもっと簡単な湿気対策があります!
それが天候のいい日に箪笥を開けて扇風機を回す という方法です。
着物の出し入れをしなくても簡単に空気の入れ替えができるので
京都の着物お手入れ職人もおすすめしている方法です!
■防虫剤・除湿剤を使用する際の注意
着物を入れているタンスに防虫剤や除湿剤を入れている方も多いと思います。
これさえ入れていれば大丈夫!と思っている方に気をつけていただきたいのは
着物を守るために入れている防虫剤が逆に着物を劣化させかねない、という可能性です。
防虫剤・除湿剤の注意点
数種類の防虫剤を併用すると、化学反応を起こし、シミや変色の原因になることがあります。どうしても入れるならば一種類だけ入れるようにしてください
■直接きものに触れないように!
防虫剤によって着物が変色、シミができる場合があります。絶対に直接着物や帯に触れないようにしてください。
■定期的な交換が必要!
市販の防虫剤・除湿剤は約半年ほどで交換が必要です。特に除湿剤は水分がたまると逆にそれがカビ発生の原因になります。
■きものに匂いがついてしまう!
防虫剤や樟脳(しょうのう)を入れて、長くタンスにしまっているときものに匂いが移ってしまうことも。せっかくの美しい着物姿なのに、漂う匂いで残念な気持ちになってしまうのは避けたい所…。
そこでオススメなのが 「備長炭シート」 です
簡単に、かつ安全に着物の保管ができる『備長炭シート』
備長炭にはさまざまな効能 があり、いずれも着物の保存には最適な働きをします。
その備長炭の特性をいかして、着物の保管に最適な環境を簡単に作れるのが備長炭シート。
■備長炭シートの着物を長持ちさせる効果
備長炭シートは着物にとって保存に最適と言われる50%~60%の湿度に保たれる調湿の役目を果たし、交換が不必要で年中使える品です。
備長炭シートの効果
備長炭には湿度を一定に保とうとする働きがあり、カビの発生を抑えます。 蒸し暑い夏や梅雨には余分な湿度を吸収し、冬の乾燥した時期には湿度の高い時期に吸収した水分を放出し適度に湿度を保つ為、いつでもきものにとって最適な湿度に保たれます。
■防虫・抗菌作用で着物を清潔に管理
備長炭の持つ調湿効果や参加還元作用(アルカリ化)により湿度の多い酸化した場所を好み繁殖する ダニ・雑菌を寄せにくくします 。
■消臭効果があるので匂いも安心
汗や煙草・食事等で酸化した 嫌な匂いを取り除きます 。
■持続効果は永遠。取り替えいらず
一度入れた備長炭シートは間で干したり入れ替えたりする必要はなく永遠に使っていただけます。
※基本的に一度タンスに入れておけばシートの手入れの必要はありませんが、お着物の為にも湿度の少ない日に換気をするなどして通気性を良くすることをオススメします。
取り替えいらずな点が大きなメリットですよ
まとめ
着物は非常に繊細で、湿気やカビに弱いといわれています。ですから、保管方法や保管環境には特に気をつけないといけません。
たんすに入れる際は、正しい畳み方できれいなたとう紙に一枚ずつ入れてからしまいましょう。
もしタンスに入れてそのままにしている方は、一度中の状態を確認してみましょう。
きちんとたたんで保管していても、風通しができていないとカビや虫の原因になりますので、定期的にタンスの中の換気や虫干しをしておくと良いでしょう。
さらに、備長炭シートをタンス一段につき一枚入れておけば安心です。
これらを守って保管していれば、いつまでも綺麗な状態で着物を着続けることができますので
いざ着ようと思って取り出したときに慌てないためにも、着物は正しく保管しておくことが大切です。
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written by TAKAHASHI
文化学部卒業後、和文化に興味を持ち地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。