伝統マーク(伝産マーク)とは?老舗呉服屋が徹底解説
皆さま、このマークが一体どんなマークかご存知ですか?
なにやら漢字と日の丸のような、一度は目にしたことがある人も多いのでは?
実は、こののマークの名前は「伝統マーク」といいます。
今回は、このマークの謎に迫るとともに伝統マークについて徹底解説していきます。
目次
伝統的工芸品のシンボルマーク「伝統マーク」
伝統マーク(伝産マーク) とは、経済産業大臣指定伝統的工芸品のシンボルマークです。
経済産業大臣が指定した技術・技法・原材料で制作され、産地検査に合格した製品には、伝統マークのデザインを使った「伝統証紙」が貼られています。この伝統証紙が貼られている製品は、検査を実施したものであり、品質について誇りと責任をもってお届けする製品です。
伝統的工芸品のシンボルマークについてhttps://kyokai.kougeihin.jp/(2021/9/11)
経済産業大臣指定「伝統的工芸品」って?
経済産業大臣指定伝統的工芸品 とは
製品の持ち味に大きな影響を与えるような部分が職人の手作りによって作られるものであり、生活に豊かさとうるおいを与えるもの。
100年以上前から今日まで続いている伝統的な技術や技法で作られた工芸品のこと、と定められています。
また材料は、品質維持や持ち味を出すために主要な部分が100年以上前から今日まで伝統的に使用されてきているもの、とされています。
伝統的工芸品とは
伝統「的」というのは
◎特長となっている原材料・技術・技法の主要な部分が今日まで継承されている
◎その持ち味を維持しながら、産業環境に適するよう改良を加えている
◎さらに時代の需要に即した製品づくりがされている
こういったものづくりがされている工芸品という意味です。
「伝統的工芸品」という名前は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められました。
きものに使われる「伝統的工芸品」
現在指定されている伝統的工芸品には、きものにも使われている技法が染織物を中心に40品目以上と数多くあります。
中には、私たちきもの永見がある鳥取県の「弓浜絣」も指定されています。
【きものにゆかりがある伝統的工芸品】
八重山上布 | 織物 | 宮古上布 | 織物 |
羽越しな布 | 織物 | 久米島絣 | 織物 |
八重山ミンサー | 織物 |
本場大島紬 |
織物 |
与那国織 | 織物 | 久留米絣 | 織物 |
首里織 | 織物 | 博多織 | 織物 |
読谷山花織 | 織物 | 阿波正藍しじら織 | 織物 |
読谷山ミンサー | 織物 | 喜如嘉の芭蕉布 | 織物 |
弓浜絣 | 織物 | 十日町絣 | 織物 |
西陣織 | 織物 | 小千谷縮 | 織物 |
近江上布 | 織物 | 小千谷紬 |
織物 |
牛首紬 | 織物 | 本塩沢 | 織物 |
信州紬 | 織物 | 塩沢紬 | 織物 |
十日町明石縮 | 織物 | 多摩織 | 織物 |
本場黄八丈 | 織物 | 琉球紅型 | 染織品 |
村山大島紬 | 織物 | 京黒紋付染 | 染織品 |
桐生織 | 織物 | 京小紋 | 染織品 |
伊勢崎絣 | 織物 | 京友禅 | 染織品 |
結城紬 | 織物 | 京鹿の子絞 | 染織品 |
置賜紬 | 織物 | 加賀友禅 | 染織品 |
名古屋黒紋付染 | 染織品 | 京くみひも | その他繊維製品 |
名古屋友禅 | 染織品 | 京繍 | その他繊維製品 |
有松・鳴海絞 | 染織品 | 加賀繍 | その他繊維製品 |
東京手描き友禅 | 染織品 | 伊賀くみひも | その他繊維製品 |
東京染小紋 | 染織品 |
「伝統的工芸品」と「伝統工芸品」の違い
上で紹介した「伝統的工芸品」と、日常でもたびたび耳にする「伝統工芸品」。
よく似た響きですが、この2つにはそれぞれ意味があります。
伝統工芸品 には明確な定義がなく、長年に渡って受け継がれてきた技術や知識を使って作られた工芸品のことを指します。
歴史ある工芸品の総称とも言うべき伝統工芸品は、現在日本に約1200種以上あるとされています。
一方で 伝統的工芸品 とは、法律で明確に定義された要件を満たした工芸品のことを指します。現在は230品目あまりが登録されています。
「伝統工芸品」という大きな輪の中に、法律で指定された「伝統的工芸品」があるということですね。
「伝統的工芸品」として規定される要件とは?
伝統的工芸品には、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で次の要件が必要と規定されています。
1: 主として日常生活で使われるもの
2: 製造過程の主要部分が手作り
3: 100年間以上継続された伝統的技術または技法によって製造
4: 伝統的に使用されてきた原材料
5: 一定の地域で産地を形成
申請の上、これらの要件を満たしていると判断された工芸品が「伝統的工芸品」に指定されます。
伝統的工芸品産業振興協会とは
一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会は、伝統的工芸品産業の振興を図るための中核的機関として、国、地方公共団体、産地組合及び団体等の出捐等により設立された財団法人です。
「伝統的工芸品産業振興協会とは」https://kyokai.kougeihin.jp/(2021/9/11)
伝統的工芸品産業の振興を行うとともに、ふだん伝統的工芸品に触れる機会が少ない方など一般の方にも、伝統的工芸品がどういったものなのか、正しく理解してもらえるように活動を行っています。
そんな伝統的工芸品産業振興協会で行っている事業は、大きくわけて4つあります。
≪4つの主な事業≫
①人材確保及び技法継承事業
②産地指導事業
③普及推進事業
④需要開拓事業
①人材確保及び技法継承事業
具体的には、伝統的工芸士の職人が産地近隣の学生たちに対して、その工芸品がどのように使われてきたのかという歴史や現代社会での使用方法など、伝統的工芸品に関する講習や工芸品の製作体験を実施しています。
また、 後継者育成や産地での実務経験が長く、伝統的な技術又は技法に熟練した現役従事者に接試験を実施し、合格した従事者を「伝統工芸士」として認定しています。
それに伴い、人材確保の一環として熟練の技術者が、新しい従事者に実技や技法などの実演指導をする際は、指導にかかる謝金の支援なども行っています。
②産地指導事業
はじめに画像があった「伝統マーク」を発行するのはこの事業。
伝統証紙の発行とあわせて、マークの認知度を上げるPRをしています。
現在産地が抱えている課題を把握し、課題克服のためのコンサルタントの派遣、各産地・伝産協会・国などの連携を深めるネットワークを構築するなど、産地の指導に関わる事業に携わっています。
③普及推進事業
情報入手方法の多様性に対応し、媒体の特性と効率性を重視してインターネット、SNS等の電子媒体またオンライン上での販売の場を産地関係者に提供し、国内外への「伝統的工芸品」の訴求効果の高いPRを図ります。
また、11月が伝統的工芸品月間だということをご存知ですか?
この伝統的工芸品月間という機会を中心として、国内のみならず海外の方にも伝統的工芸品への関心を持ってもらう活動や、工芸品振興につながるイベントを開催します。
11月を中心に伝統的工芸品を広く国内外の関心を喚起し、継続的な工芸品振興に繋がるイベントを開催します。
④需要開拓事業
商品開発にとどまらず、販路を持っているプロデューサーとともに現代のライフスタイルに調和する新しい商品開発を促したり、現代の暮らしの中で活きる優れた工芸品を募集してコンクールを行い、新らたな販路を開拓します。
伝統マークのついた着物でワンランク上の着物ライフを
伝統マークとは認定を受け選ばれた伝統的工芸品に使われているマークです。
その伝統マークがついた伝統的工芸品は、ものづくりの国・日本で数百年に渡って連綿と繋がれてきた職人の技術、魂の粋といえます。
普段の着物やお持ちの着物に伝統マークで認定された技術の着物や小物を少しプラスしてみると、今まで以上にスッと背筋の伸びる心地になるでしょう。
ぜひ、日本の素晴らしい「本物の技術」を身にまとって、素敵な着物ライフをお過ごしくださいね。
written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。