10月になると季節が秋へと深まり、衣替えの時期でもあります。
着物の世界でも、単衣(ひとえ)から袷(あわせ)の着物に切り替わる重要な時期です。
ですが昨今は10月でも残暑が厳しい日が続くことも少なくないので「袷か単衣か?」と悩むことも多いでしょう。
この記事では、気温に合わせた10月の着物の選び方とコーディネート方法を具体的に紹介します。
季節感を取り入れた装いのアドバイスや、10月の暑い日におすすめの着物コーディネートも画像つきで解説します。
ぜひ参考にしてくださいね。
目次
10月に適した着物の種類:暑い時は単衣でもOK?
10月に適した着物の種類について、一般的なルールと最近の流れなどをみていきましょう。
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着物の暦では10月から袷(あわせ)の着物
一般的な着物の暦では、10月からは裏地のついた袷(あわせ)の着物を着ることが基本とされています。
10月は日本の四季の中でも衣替えの時期として知られ、単衣(ひとえ)から袷(あわせ)の着物に移行する月とされるからです。
袷は着物全体に裏地があるため保温性が高く、寒くなり始めから暖かくなり始めまで幅広い期間に適しているといわれてきました。
ですが近年になるにつれて、「寒くなり始め」が10月入ってすぐではなくなってきているのが実感できますよね。
着物の暦で想定している10月とは気候状況が大きく変わってきたため、衣替えの時期にも少しずつ変化が見られています。
季節に合わせて単衣もOK!
先程のとおり、近年は10月でも気温25度を超える日が増えました。
暑いと感じる日には、単衣(ひとえ)の着物を着ても問題ありません。
以前は昔からの着物の暦を守ろう、という風潮もありましたが、最近は「気候の変化に合わせて柔軟に対応」という意見が広まってきています。
実際、着物の暦に合わせて気候に合わない着物を着ては、健康を害することもあり得ます。
暦上のルールに縛られすぎず、気温や着用シーンに応じて単衣を着ることもよいでしょう。
例外:フォーマルな席
中には、着物の暦に則ったほうが良いとされる場面もあります。
たとえばフォーマルな場所で着物を着る場合です。
格式張った式典やお祝いの席では、風習に則った装いが相手への礼を尽くすことにもつながるとされるからです。
そういった席では長襦袢を夏用(ただし半衿は袷用)にしたり、冷感グッズを持ち歩くなど、しっかり暑さ対策をして臨みたいです。
秋におすすめの着物の色と柄
前提として、着物も衣服であり、洋服と同じように着たいものを着ていただくのが楽しみのコツです。
それでも「迷ってしまう」という方や「着物に季節感を取り入れたい」という方におすすめの色、柄を紹介します。
10月は秋の始まりを感じる時期。
秋らしさを取り入れるなら、深みのある色合いや秋を連想させるモチーフを取り入れることで、季節感を表現できます。
着物の色: 茶、栗色、葡萄色、藍色など
秋は、茶や栗色、葡萄色、藍色、辛子色といった深みのある色合いがイメージされますね。
こういった色は洋服でも秋に人気のカラーなので、季節のカラーは洋服でも着物でもある程度共通しているんですね。
少し違うのは、和装では着物を一枚着るとそれがコーデのメインカラーとなり、より色の印象が強く出やすいことです。
ご試着やシミュレーションをしながらお気に入りの素敵な秋色の着物を探してみてくださいね。
取り入れる柄: 紅葉、松葉、銀杏、吹き寄せ、ブドウなど
秋が見頃の紅葉や、旬の銀杏、ブドウなどは帯小物のモチーフにも多く採用されています。
紅葉や松ぼっくりなど秋のモチーフを集めた吹き寄せの柄も、秋時期の着物や帯の柄にぴったり。
さらに着物の柄によく見られる菊も、本来は秋が旬。
ただ、菊は桜と並び日本の国花でもあるので、季節を問わず着られる柄です。
また更紗やペイズリー模様のような特定の季節のイメージがない柄もよいものです。
着物など秋色の中にさり気なく柄を溶け込ませることで季節感のある着こなしに仕上がります。
着物で季節のモチーフを取り入れる時は「先取り」が基本とは言われますが、昨今は季節の変わり目が予測できない日々です。
その季節どんぴしゃのモチーフでその時期特有の着こなしを楽しむのもまた、楽しい着物ライフに繋がりますよ。
秋の着物に合わせる帯・長襦袢・小物の選び方
着物コーディネートでは、着物自体の色や柄だけでなく帯、長襦袢、小物もこだわりたいですよね。
秋時期におすすめ 帯の選び方
帯は、透け感のない名古屋帯、半幅帯、京袋帯や袋帯がおすすめ。
半幅帯や京袋帯はよりカジュアル感が強まるので、その日のコーディネートのコンセプトや好みで選んでみてくださいね。
季節感を出すなら秋らしいモチーフの描かれたものや、深みのある色味の帯を選ぶのもよいでしょう。
▼たとえば以下のような帯が10月にはおすすめです。
秋の着物の下に着る長襦袢は?
長襦袢は、気温によって袷と単衣を使い分けましょう。
まだ暑さがある場合は、袷の着物に単衣の長襦袢を合わせて調節するのもOKです。
また普段着の着物であれば、筒袖の半襦袢(うそつき)に下はステテコなどで涼しく装うのもよいですね。
ただし前述した通り、お顔もとに見える半衿は絽など夏の素材ではなく、塩瀬など袷時期の素材をつけるようにしましょう。
▼以下のような半襦袢を上手に取り入れれば、暑さの残る10月も快適に着物を楽しめます。
秋らしさを演出する小物選び
着物は、合わせる小物で季節感を演出できるのも楽しいポイントです。
たとえば帯締めや帯留めに秋カラーを取り入れると、コーディネートに秋らしさがプラスできます。
またどんぐりやリスなどの秋をモチーフにしたデザインの帯留めを選べば、さらに季節感のあるコーディネートに。
小物使いにひと工夫加えることで、全体の印象が華やかに仕上がります。
▼秋らしい色の帯締め・帯揚げをお好みで選んでコーディネートを楽しみましょう。
秋にもおすすめ!秋の洗える着物コーディネート例
近年、秋口でも暑い日が増えています。
そんな日におすすめなのが、木綿や化繊(ポリエステル)の「洗える着物」。
木綿着物は1年を通して着られる単衣の着物なので、暑い日も涼しく着られます。
洗える素材であれば汗をかいたり、突然の悪天候に見舞われても安心。
秋らしい色味の洗える着物を集めましたので、ぜひ秋の着物コーディネートの参考にしてください。
辛子色の阿波しじら織:秋の気軽なお出かけに
からし色に白の縞柄のほっこりとした阿波しじら織です。
温かみのある木綿着物で、寒暖差の大きい季節でも快適に着られます。
藍色のデニム着物:地厚なデニム生地が秋の単衣に最適
深みのある藍色がどんな季節にもぴったりのデニム着物です。
厚みのあるデニム生地で、秋の単衣に最適。
綿100%でお手入れが簡単な点も魅力です。
ワインレッドの久留米絣:秋らしい深みカラー
葡萄を思わせるワインレッドが秋らしい久留米絣です。
軽やかに着られる木綿着物は、肌着や羽織で調節すれば盛夏以外の3シーズンで着用できます。
ベージュの洗える江戸小紋:秋のお茶席にも
ポリエステル素材の洗える着物の江戸小紋です。
袷仕立てのため、10月~5月にかけて着用可能。
自宅で水洗いできるので、汗ばむ陽気の日にも安心して着られます。
色無地感覚で着られる江戸小紋でお茶会にもおすすめです。
まとめ:秋の着物は気温に合わせて装いの工夫を
今の時期は秋の始まりを感じながらも、気温が変わりやすい時期です。
伝統的には袷の着物が主流ですが、気候に合わせて単衣を選ぶ柔軟さも必要です。
どんな着物を着るか悩む方、季節感を着物に取り入れたい方は秋カラーや秋のモチーフを取り入れながら楽しみましょう。
また、秋は気温やシーンに応じた工夫で快適さがぐっと変わります。
本記事を参考にして季節感あふれる着物のコーディネートを楽しんでください。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。
この記事を監修した人 A.OTA
きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/