子どもの健やかな成長を祝う七五三は、家族にとって一生の思い出になる大切な行事です。
そんな特別な日に、母としてどのような着物を着るべきか、またどのように選んでいくかは迷うポイントですよね。
この記事では、母親が七五三で着る着物の種類や選び方のコツ、コーディネートなどを解説します。
七五三の特別な一日を素敵に彩るための参考にしてみてくださいね。
目次
七五三で母親が着る着物の種類
まず、七五三で母親が着るのにぴったりな着物4種類を確認しましょう。
①訪問着
訪問着はフォーマルな場面で広く着用される着物の一つで、お持ちの方にはおすすめの着物です。
胸元から上前に柄が入る華やかさは、晴れの席である七五三にはぴったり。
お家にお持ちの方や、レンタルの取扱店も多いので、一番有名な着物です。
②色無地
セミフォーマルの着物である色無地も七五三で着用できます。
色と地紋のみで柄のない色無地は、上品かつ控えめな印象で子どもが主役の行事にマッチする着物です。
あくまでも子どもを主役として、一歩控えた装いを意識したい方におすすめです。
③付下げ
付下げは一般的に訪問着よりも控えめに柄が入った着物です(一部例外もあります)。
格としては訪問着より一歩控えたセミフォーマルで、こちらも自身は控えた装いをした方におすすめです。
柄付にもよりますが、基本的に色無地以上・訪問着未満といった雰囲気になることが多いでしょう。
④江戸小紋
江戸小紋でも柄によっては七五三に着用することができます。
「小紋」は基本的にカジュアル着物ですが、細かい柄の江戸小紋であれば色無地感覚で着られるため、七五三にも適しています。
特に「三役」と呼ばれる角通し、鮫、行儀の柄は格式の高い柄とされており、フォーマル感のある行事にも合う装いになります。
袋帯などフォーマルの帯を合わせれば、七五三らしい品格のあるコーディネートに仕上がるでしょう。
七五三で母親が着物を着るときのルール
基本、子どもが主役となる七五三では、両親の衣装に関していくつかルールがあります。
「選ぶポイント」とは異なり、このルールは基本的に守りながら衣装選びをするのがおすすめです。
基本的なマナーとルール
まず、主役は子どもですので、子どもよりも着物の格を下げるのがお約束です。
たとえば、七五三の母親では第一礼装の留袖を着るのはNG。
▼(例)黒留袖は第一礼装なので避けましょう
前述した訪問着や付下げ等の準礼装以下のフォーマル着物を選ぶようにしましょう。
子どもが着物の場合は母親はフォーマルな洋装か着物がおすすめですが、子どもより控えめな色味や柄を選ぶのがポイントです。
子どもが洋装の場合は、洋装より和装が格上とされるため、両親ともに洋装にしてしまうのがおすすめです。
夫婦間での衣装選びも大切で、夫婦間で衣装に格の差が出ないように調整しましょう。
たとえば、子どもと母親が着物で父親がカジュアルスーツではアンバランスになります。
子供と母親が着物を着るなら、父親はフォーマルスーツを選ぶようにしましょう。
避けるべき色柄
母親の着物で、七五三の場に望ましくない色やデザインもあります。
とくに避けたいのは、黒などの沈んだ色や派手すぎるデザイン。
黒や濃い紫などの強く主張のある色は、たとえ分類上は「訪問着」等のフォーマル着物だったとしても、母親としての装いには向きません。
(自身が主役の席や招待されたパーティなどにおすすめ。)
子どもが主役の行事では変に目立ってしまう可能性もあるので、あまりにも派手だったり奇抜な柄は控えるのがセオリーです。
着物と自身のサイズ確認
ご存じない方も多いですが、実は着物にもサイズがあります。
母親などから譲り受けた着物や人から借りた着物を着る場合は、自身が着られるサイズか確認しましょう。
着物は着付けによって調節が効くので、ある程度サイズ違いがあっても着られることが多いです。
しかし中には着付けでカバーできない場合もあるので、不安な場合は前もって確認しておきましょう。
とくに、借り受け先より自身の胴回りや身長が大きいときは要注意です。
着付け予定の美容院さんや、そういった相談を受けている着物屋(呉服屋)で試着してみるのも手ですね。
▼きもの永見でも相談をお受けしています
七五三で母親が着物を選ぶ際のポイント
七五三で母親が着物を選ぶ時のポイントを3つ紹介します。
基本的に「着物の種類」挙げた着物ならどれを選んでも間違いはありません。
選ぶポイントはあくまで七五三への考え方で、困ったときの判断基準の一つにしてもらう程度にお考えください。
①お参り・お食事に合わせた選び方
祖父母が遠方のお住まいの方など、七五三では一日で参拝・撮影・食事会を済ませるスケジュールを組む方も多いです。
参拝、撮影、食事会などそれぞれの場所の雰囲気から当日の装いを考えるのも選び方の一つです。
たとえば参拝・撮影後にホテルなどかしこまった場で食事をする場合は、しっかりフォーマルな訪問着が場の雰囲気とマッチします。
カジュアルなレストランやお家での食事ならば、格式張りすぎない色無地などの着物が合いやすいかもしれません。
逆に、参拝・撮影後は洋服に着替えて食事に行く、という方はあまり考えなくても良いポイントですね。
②子どもの衣装とバランスをとった着物選び
ポイントの一つとして、子どもと比べて目立ちすぎないように選ぶ方もいます。
七五三は子どもが主役の行事なので、子どもより親が目立つような装いは避けるのがベターです。
たとえば子どもが華やかな衣装を着る場合は、母親もある程度華やかな着物を着ても素敵かと思います。
逆に子どもがすっきりした衣装を着るなら、色無地や江戸小紋など控えめな印象の着物のほうがバランスがよいケースもあります。
衣装の雰囲気やデザインなどにもよるので、子どもの衣装とのバランスを見ながら選んでみるのも手段です。
③家族の服装を意識したコーディネート
一緒に参拝する家族の服装と雰囲気を統一するのも一つの指標になるでしょう。
両親の衣装の格については「ルール」でお話したとおりですが、さらに一体感を出したいなら色柄までこだわるのも良いですね。
写真は一生にわたり残るものですから、家族間のコンセプトをまとめて、後から見返したときにも一体感のある写真にしたい方におすすめの選び方です。
子どもや両親だけでなく、祖父母も一緒なら皆さんどういった衣装を着るのか相談しながら決めていくとより安心ですね。
淡い色の着物が定番:クリーム、ピンク、ブルーなど
ご相談の中でも、着物選びで何色を選ぶべきか悩む方は多くいらっしゃいます。
子どもを主役にバランスは考えつつ、その中でも自身の好きな色、着たい雰囲気の着物を選ぶのがおすすめです。
七五三の母親の着物として特に人気が高いのは、クリームや薄いピンク、ブルーなどの淡い色調の着物です。
地色から、控えめながらも華やかさを損なわず優し気な印象を演出することができます。
ひとくちにピンク、ブルーなどと言ってもオレンジ~紫がかったピンクや紫~ミント系に近いブルーなど色調はさまざま。
また着物自体の色だけでなく、柄やその入り方によっても雰囲気はガラッと変わってきます。
少しの違いに顔映りや好みが左右されることもあるのが着物なので、色々な着物を着比べてみるのがおすすめです。
コーディネートのポイント
ここからは帯や小物のコーディネートのポイントを解説していきます。
ポイントをおさえて、素敵な着姿で七五三に臨みましょう。
帯の種類と色の選び方
基本的には、金糸銀糸の使われた袋帯を選ぶのが定番。
母親の着物の場合、主張の強くない品格のある帯合わせがポイントです。
年齢や自身の雰囲気、着物の雰囲気にもよりますが、白やクリーム地、黒地などに金糸銀糸で名物裂がデザインされた袋帯がおすすめ。
フォーマルな格がありつつも上品さを感じさせる帯合わせになりますよ。
草履とバッグのコーディネート
草履バッグもフォーマル・カジュアルの物があるので、金銀が使われたフォーマルのものを使ってください。
草履とバッグは同じ帯地でセットになったタイプを選ぶと、より正式で端正な印象になります。
ただしこれは絶対ではないので、バッグより破損することが多い草履だけ、状態に応じて新調される方もいます。
洋装のバッグを持つ場合は、かっちりした形で大きすぎないものを選ぶと着物との調和がとれやすいです。
帯揚げ・帯締めなどの和装小物
重衿や帯揚げ、帯締めなどの小物選びも、基本的には上品さ、明るさを意識するとよいでしょう。
時代によって流行りがありますが、現代では淡い着物に明るめの色味の小物を選ぶとスッキリと今風で素敵な着姿にするのが人気です。
たとえば帯締めはクリーム色や薄ピンクなどのパステルカラーを着物の色味に合わせて、帯揚げも明るめの色を選ぶと華やかな印象になります。
母親としての着物コーディネートでは、個性的よりも上品で明るい雰囲気を目指して小物を選ぶのがポイントです。
母親のおすすめヘア
続いて、着物姿に合うヘアスタイルをご紹介します。
着物に似合う母親のヘアスタイル
七五三で母親が着物を着る際には、着物に合わせてきちんとヘアセットしましょう。
ショートヘアなら無理に結んだりせず、バーム等でそのまま流してスッキリ見せるとキレイです。
ボブヘアなら編み込みやねじり下めにまとめると上品な印象に。
ミディアムからロングヘアの場合は、シニヨンなどのアップヘアで首元をすっきりさせると着物とのバランスがとれて美しいです。
また、着物のときはメイクもナチュラルメイクより少ししっかりめにするのがおすすめ。
子どもより控えめとはいえ着物は華やかな衣装なので、それに合わせてメイクもしっかりと華やかさを演出していきましょう!
ただし、やり過ぎにはお気をつけてくださいね。
華やかさをプラスする髪飾り
髪飾りは、着物コーディネートでさりげない華やかさをプラスする重要なアイテムです。
かんざしやコームを合わせる場合は、パールのあしらわれたものやべっ甲、蒔絵のタイプが上品でおすすめ。
ちなみに、母親としての立場では、振袖に合わせるようなボリュームのある髪飾りはNG。
▼こんな髪飾りは母親としての着物では避けるのが◎
大人の上品さを意識して控えめなアイテムを選びましょう。
七五三は母親も着物で素敵な思い出を残しましょう
七五三は子どもの成長を祝う大切な行事であり、母親としての着物選びは迷うポイントですよね。
この記事では、母親におすすめの着物の種類や選び方、コーデやヘアなどを解説しました。
七五三は子どもはもちろん、家族全員にとって大切な日です。
ルール・マナーや選び方はさまざまありますが、なんと言ってもまずは後悔のない着物選びが大切です。
「選び方」には囚われすぎず、ルールに沿いながら自身の着たい着物を着ていただくのが、七五三を素敵に日にしていただく第一歩です。
▼下記ブログも参考にしてみてくださいね。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。
この記事を監修した人 A.OTA
きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/