「着物用コート」を徹底解説!和装アウターの格や種類・素材・衿の形による選び方を紹介
天候天候冬のおでかけ、着物でも大切になってくるのはコート選びです。
単純な寒さ対策だけではなく、コートもコーディネートの一部として選んでみるとワンランク上のおしゃれが楽しめます。
本記事では、着物用コートの主な7種類の特徴やコートの素材、衿の形などによる選び方のポイントを解説していきます。
アウター以外の防寒アイテムや、洋服から転用できるアイテムも紹介していきます。
目次
着物用コート|代表的な7種類
着物のアウターと言えばコレ!な代表的なタイプは7種類です。
それぞれの特徴と、向いている着用シーンをご紹介します。
①道中着(どうちゅうぎ)
着物と同じように前で衿を交差させて紐で結んで留める形が特徴の道中着は、現代の着物用コートの主流。
その名の通り道中の寒さや汚れから守るためのコートで、素材や柄の種類も幅広いのが特徴です。
着物と同じ絹素材はもちろん、冬向きに暖かいウール素材、春秋向きには軽やかな薄手の生地の道中着もあります。
道中着が活躍する着用シーンはカジュアルからセミフォーマル。
日常的な街歩きやカジュアルなイベント、おしゃれを楽しみたい普段着のシーンで特におすすめです。
②道行(みちゆき)
道行コートは道中着と並んで一般的な着物用コートで、特にフォーマルな場面におすすめです。
衿が四角く開いており、前をボタンで留めて着用します。
この衿の形から、道行コートは別名「道行衿(みちゆきえり)」とも呼ばれます。
道行コートは絹や縮緬などの素材がよく使われており、見た目にもキッチリした印象を与えます。
正装するフォーマルシーンにはぴったりなコートです。
柄や素材の選び方によってはカジュアルな着物にも使えるため、着用シーンに応じて選んでみてくださいね。
④雨コート
雨コートは、雨や雪などの悪天候から着物を保護するために着るコートです。
一番の特徴は、撥水性が高い素材で作られている点。
着物の大敵である水をある程度弾き、着物の水濡れを防ぐことができます。
「ワンピースタイプ」や上下が分離した「二部式」などの形状があります。
いわゆる「雨ガッパ」とは違うため、雨のときは傘と併用してしっかり雨を防ぎましょう。
予期せぬ天候の変化への備えになるので、小さく畳んで持っておくと少し安心です。
また、裾までしっかり覆う形状になっているため、雨用だけでなく塵よけとしても重宝します。
③その他防寒コート
上記のように明確に分類されない和装用アウターで、防寒に特化した厚手の素材や長めの丈が特徴です。
洋服のコートに似た形状でボタンを留めて着用する形のものが多いです。
素材はウールやカシミア、ビロードなどの暖かい素材が多く使用されます。
洋服のコートと似た感覚で着られるため、着物初心者から、着こなしにワンポイントを加えたい上級者まで気軽に取り入れられるアイテムです。
寒気の厳しい日や夜間のお出かけ、また冬に屋外で過ごす時間が長い場合などにもおすすめ。
⑤ポンチョ・ケープ
ポンチョやケープは通常洋服と合わせるアウターですが、カジュアルシーンの着物にもおすすめです。
袖がないデザインは袂と帯の自由度を保ち、手軽に着られるのが嬉しいポイントですね。
ポンチョは丸みのあるフォルムが可愛らしく、ケープはシャープでカチッとした印象を与えます。
防寒ならウールやカシミア、ニットなどの温かい素材がおすすめ。
シンプルな色合いを選ぶと着物に合わせやすくなります。
⑥ショール
肩からサッと掛けられて、畳んでコンパクトにしまえるので便利な防寒アイテムとして人気です。
ショールはもちろん洋服と兼用できて、素材や色などバリエーションの多さは抜群。
年間を通して活躍してくれます。
冬には厚手の暖かい素材、夏はさらっと薄手の素材で、ちょっとした防寒~カーディガン感覚まで幅広く使えます。
⑦羽織
主にカジュアルなシーンで活躍する羽織。
着物の上に軽く着て、前を羽織紐で留めるのが一般的です。
洋服和服問わず、コートは室内では脱ぐのがマナーですが、羽織は室内でも着たままでOK。
洋服でいうとカーディガンのような位置づけです。
小紋柄や紬の生地などの正統派なものから、レース製など最新のものまで様々なタイプがあり、おしゃれを楽しみたいお出かけシーンにぴったりです。
落ち着いた色の無地羽織であればセミフォーマルまで着用できますが、基本的には礼装には向きません。
着物用コート|種類によるTPOや格は?
着物用コートのTPOや格は、衿の形だけでなく色・柄・素材よって変わってくるので、着用シーンに応じて選びましょう。
それぞれの特徴を知っておくと困ったときの判断材料になります。
冠婚葬祭や正式な式典など、フォーマルシーンでは黒や紺、紫などの落ち着いた無地感のコートがおすすめ。
ほかにもフォーマルでは柄の繋がった絵羽柄の道行など、訪問着の装いの格を高めてくれます。
一方で柄の繋がらない小紋柄のコートやカジュアルな紬地のコートは、街中でお出かけにぴったり。
コートのTPOについては初心者には判断が難しいことも多いので、迷ったときは身近な人やお店に相談しながら選ぶのがおすすめです。
着物用コート|衿の形の種類
着物用コートには、衿の形にいくつか種類があり、印象が異なります。
フォーマル向き、カジュアル向きなど着用シーンを見てみましょう。
道中着衿(どうちゅうぎえり)
道中着衿は、着物の衿のように打ち合わせる衿の形が特徴で、近年もっとも一般的なコート衿です。
「道中着」の衿の形で、着物の衿とは違い衿先が裾まで繋がっているためすっきりしたフォルムで着こなせます。
セミフォーマルからカジュアルまで幅広く着用できるのが道中着の魅力です。
紐で留めるタイプのため体型の変化にも対応可能なのもポイントといえるでしょう。
道行衿(みちゆきえり)
道行衿は、四角く開いた特徴的な衿の形で、和装コートの中でもフォーマルなデザインです。
「道行コート」の衿の形で、前をボタンで留める仕様になっています。
冠婚葬祭やお茶会など、フォーマルなシーンで使うことが多いのが特徴の道行衿ですが、小紋柄や紬素材の道行コートになるとカジュアルな場面でも着用可です。
きちっとした上品さをプラスできるので、一着持っておくと重宝します。
都衿(みやこえり)
都衿は、道行衿に比べて衿の角が滑らかにカーブしており、柔らかな印象を与えるデザインです。
フォーマルからカジュアルまで幅広いシーンで対応可能。
一見すると道行衿との違いが分かりにくいですが、より親しみやすさを感じさせられる形状です。
道行衿よりも曲線的で優しげな印象になるので、お好みで使い分けるのがおすすめ。
着用シーンを問わず、長く使えるデザインです。
千代田衿(ちよだえり)
千代田衿は、大正時代中期に洋装コートの要素を取り入れて作られたデザインが特徴です。
カーブした衿合わせと少し洋風なルックが魅力で、セミフォーマルからカジュアルな場面に使うことができます。
衿元のゆるやかなカーブが柔らかさを感じさせる千代田衿は、女性らしさとオシャレ感を演出したい方におすすめです。
自分らしい個性を活かしておしゃれの幅が広がる一着となるでしょう。
へちま衿
へちま衿は、名前の通りへちまの形を思わせる柔らかなカーブが特徴で、主に防寒を意識した冬用コートに多く見られます。
厚手の着物にもフィットするため、寒い季節のお出かけに便利。
衿が外側に折り返されたデザインはカジュアルな印象を与えつつも、女性らしいエレガントさも兼ね備えています。
カジュアルからセミフォーマルまで着用できるコートです。
被布衿(ひふえり)
被布衿は、三歳の七五三で見られる被布(ひふ)のデザインを取り入れた衿で、カジュアルからセミフォーマルまで対応します。
飾り紐が付いており、可愛らしい印象を与えるため、女性らしさを強調したい方に人気です。
普段のカジュアルな装いにはもちろん、セミフォーマルなコーディネートに合わせると少し遊び心あるコーデが楽しめます。
少し捻ったコーデをしたい方にもぴったりのデザインです。
きもの衿
きもの衿は、名前の通り着物に似せた衿合わせデザインが特徴で、前を紐で結ぶスタイルです。
シンプルながらもカジュアル感が強く、普段使いの装いによく合います。
リサイクル着物をリメイクして作られたコートにはこのデザインが多く見られ、気軽に着られるのが魅力です。
気負わない場にぴったりで、普段から着物を楽しむ方には重宝されるデザインです。
着物用コートの選び方
着物用コートは用途やコーディネートに応じて選んでいきます。
自分にぴったりのコートを選ぶために、いくつかポイントを見てきます。
ポイント①生地の素材
生地の素材はコートの見た目や季節感など役割が大きく変わってきます。
例えば正絹生地のなかでも、染め物の縮緬か織物か、などでも雰囲気が大きく変わるので、着用したいシーンやお好みに合わせて選びましょう。
防寒目的で着用したい場合は、ウールやベルベット、別珍などの暖かい素材がおすすめ。
一方、塵除けや軽い雨よけを目的とする場合は、撥水に優れるポリエステル素材を選ぶのもよいでしょう。
機能性を求めず、帯付きで歩くのを避けるため軽く着るならレースの羽織やコートもオシャレです。
ポイント②色柄
コート地の色柄は、着物姿の印象を大きく左右します。
例えばフォーマルなシーンでは、落ち着いた色の無地や絵羽模様が基本。
正式な場面にふさわしい落ち着きと品格が出ます。
一方カジュアルな日常使いには、小紋柄や縞模様などを選ぶと親しみやすく柔らかな雰囲気を演出できます。
ただ、フォーマルと違いカジュアルでは厳密にルールを考えすぎず、着たい物を着ていただくのがベストです。
表地はシンプルで裏地が派手タイプなどは、脱いだら分かる遊び心がいつの時代も人気です。
ポイント③衿の形
コートの衿の形は全体の印象や格を決める大きなポイントになります。
フォーマルなら道行衿、カジュアルなら道中着衿や千代田衿などがおすすめです。
へちま衿は上品でセミフォーマルなシーンでも違和感なく使えるため、幅広い年齢層と場面に対応します。
自分の好みや着用シーンに合わせた衿型で、コーデとのマッチ感もアップします。
ポイント④丈
コートの丈も着物用コート選びでは欠かせないポイントです。
コートや羽織の丈は時代によって流行があります。
現代は膝下の長め丈が主流となっているので、現代に即した着こなしがしたい方は長めがおすすめです。
これはあくまで「現代の主流」なだけでルールではないので、自身の価値観に合わせ選ぶのが◎。
ほかにも雨コートや防寒用のコートなどは裾すれすれの長さが基本とされるので、コートによって選び分けましょう。
【防寒対策】コート以外の寒さ防止アイテム
防寒対策では、コート以外のアイテムもあわせて使用することでより寒さを防ぐことができます。
冬用の肌着
冬場の着物には肌着も暖かさを重視したものを選ぶと、より快適に過ごせます。
とくに和装肌着の冬用タイプは、首元や袖口が着物から見えないように工夫されているため、冬でも美しい着姿をキープしたい方におすすめです。
また静電気防止や汗を吸いやすい素材を採用した製品もあり、着物と組み合わせたときの快適さも考えられています。
冬場のお出かけはコートだけでなく、暖かい和装下着を選びましょう。
▼冬の和装肌着についてはこちら
冬の着物「和装肌着」は何を着る?専門店が教える肌着選びと防寒対策 | きもの永見
足袋インナー
足元の冷えは冬の和装において最も気になるポイントのひとつですよね。
そこで活躍するのが足袋インナー。
足袋の下に1枚足袋インナーを着用することで足元の冷えを軽減し、快適に過ごすことができます。
価格もリーズナブルなので、防寒対策としてぜひ取り入れたいアイテムです。
▼足袋インナーは、着物着用時の足先の冷えに悩む女性におすすめ。
インナーパンツ
下半身の冷えを防ぐためには、インナーパンツを取り入れるのもおすすめ。
冬の着物姿では裾から冷気が降り込むことを防ぎつつ、保温性を保つことが大切です。
インナーが着物の裾から見えるのを防ぐため、七分丈のパンツが特におすすめです。
▼和装用インナーパンツは、発熱素材で着物のときの足元の冷えを防ぎます。
トイレの際にも扱いやすい作りになっている点もうれしいポイントです。
和装用七分丈パンツ | 冬の冷え対策に最適【発熱・保温・静電気防止加工】
手袋
防寒対策として見落としがちなのが手袋です。
シンプルなものなら、着姿全体のバランスを保ちやすくなります。
カジュアルなおしゃれ着では自由なコーディネートを楽しめます。
さらに、裏起毛素材のものや、カシミヤなどの高級素材を用いたものは、保温性が優れており快適さを増します。
まとめ
着物用コートや羽織は、機能の面でも、おしゃれの面でも和装を一層楽しむために大切な要素です。
それぞれのコートの特徴を知り、用途やシーン、好みに応じて選んでいくのがポイント。
ぜひコートや羽織を活用して、おしゃれな着物ライフを送ってくださいね。
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written by ISHIKURA
歴史学科卒業後、地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。
この記事を監修した人 A.OTA
きもの永見「美装流着付け教室」講師。 「着物でお出かけしてみたい」そんなあなたのお手伝いを致します。 着付け教室HP https://kimono-nagami.com/school/