ゆかたをお探しの時、様々な色柄・生地の品がずらりと並んでいてどんな浴衣を選べばいいかわからない…というお悩みはありませんか?
実は、浴衣の素材や織り方によって着心地やお手入れ方法などもそれぞれ違ってきます。
また、浴衣の種類や着こなしによっては、花火大会などのカジュアルスタイルから、美術館などの、よそ行きの装いまで幅広く着ていただけます。
素材や織り方、染色法などの違いを押さえておけば、TPOに合わせた浴衣選びにも役立ちますよ。

目次
浴衣選びのポイント①~素材~
素材が違うと肌触りや通気性、丈夫さなども変わってきます。また、最近ではクリーニングに出さなくても洗濯機で洗える便利な生地も人気です。それぞれの生地の特色について説明していきますね。
木綿
ゆかたの代表的な素材で織りや染めの種類が最も豊富な浴衣です。吸湿性、通気性が高く、肌の弱い方にも安心な素材と言われています。丈夫な生地なのでご家庭で手洗いも可能です。生地質によってはシワが残りやすいので、脱水は軽めに、気になる場合はアイロン掛けもオススメします。カジュアルな装いとして、お祭りなど気軽に着て行ける浴衣です。
化繊
よく用いられるのはポリエステルの浴衣。基本的には普段の洋服と同じ洗い方で洗うことができますので、気軽にお手入れができるのが最大のメリットです。
また、ポリエステル製の浴衣は発色がよく、幅広い柄が展開されているので色やデザインを重視している方も、お気に入りの一着が見つかるはずです。
セオアルファ
セオアルファは東レの開発した、高い吸水性を有するポリエステルの生地です。スポーツウェアなどにも採用されている素材で、通気性は抜群。
綿100%素材を上回る吸水性があるので、汗をかいても生地に貯まることなくサラッとした着心地がとても快適です。また、通常のポリエステル同様、洗濯機で洗えて、なおかつシワになりにくい形態安定性があるのでアイロン掛けが不要というメリットも。

麻
盛夏の素材の代表が麻です。生地にハリがあり、通気性が良いのが特徴。また、汗を吸っても乾きやすくサラリとした肌触りが心地の良い生地です。一方で、シワにはなりやすいので注意が必要。
木綿との交織で、双方の良さを取り入れた「綿麻」という素材の浴衣もあります。「綿」が多めだと柔らかい肌ざわり、「麻」が多いとシャキッとして色も濃い生成色です。
浴衣や反物についているラベルを見ると割合が表示されているので自分の好みの割合をチェックしてみて下さい。
絹混
絹の浴衣は綿や麻との混じり織りが一般的です。絹が入ることで柔らかさと高級感が出ます。他の素材の浴衣よりも格が高いので美術館やパーティー・イベントなどよそ行きの装いにも活躍します。一方、水に弱い一面もあるのでお手入れは呉服店のクリーニングに出すことをオススメします。
浴衣選びのポイント②~織り~
平織りで透け感がなく、表面に凹凸がないものをコーマ地といい、カジュアル向きなので夏祭り・ビアガーデンなどで着用する方が多い浴衣です。
一方表面に透け感や凹凸などのある織りの浴衣はお祭りはもちろん、少しかしこまった美術館などのよそゆき向きにも着ていただけます。また、織り方によって着心地や風通しの良さも変わってきますので、ぜひご自身のお好みに合った一着を試着することをおすすめします。
綿絽
絹の夏着物と同じく、「絽目(ろめ)」と呼ばれる特有の細かい穴が縞状に入っています。
浴衣ですが半襟付きの半襦袢を下に着れば、夏着物のように着ることもできます。 紅梅などよりも多少透け感がありますので、下着の上から直接羽織るのはNG。着用の際は必ず浴衣用のスリップを下に着ることをおすすめします。

綿紅梅
縦緯ともに太い木綿糸を細い木綿糸の間に格子状に織り込んでいる伝統的な織り方です。
格子状の凹凸部分が段差となることで生地が肌に張り付かないので、綿100%であってもサラリとした着心地です。
綿紬
糸の紡ぎ目となるフシが生地の表面に出る織り方です。
紬織と同じような、節のある木綿糸を使ったハリのある手触り。生地が厚めで透け感がないので昼間でも着やすい浴衣です。
縮み
糸に強い撚りをかけ、表面にシボを出した生地。浴衣の格としてはよそゆきの装いに適しています。麻は盛夏向きで、綿は初夏~晩夏まで。新潟県小千谷地方で江戸時代初期から織られている小千谷縮は、国の重要無形文化財に指定されています。
画像のように、半衿を付けて足袋を履き、名古屋帯を合わせると夏着物と同格の装いになります。
ホテルや美術館にも着ていける着こなし方です。
浴衣選びのポイント③~染色技法~
現在流通している浴衣は機械印刷によるものが多いですが、元来ゆかたは白生地を織ってから職人が色をつける「後染め」が一般的でした。技法としては江戸時代からの「型染め」「絞り染め」などが有名で、今現在も職人の手によって作られた浴衣もあります。それぞれの技法や特色を紹介していきます。
型染め
型紙を使って染めない部分にのりを置いてから染める、防染という技法です。柄がくっきりと染められるため粋を好む江戸の浴衣によく用いられました。
注染(ちゅうせん)
型染めの一つである注染は、近年に誕生した手拭、ゆかたの独特な染色法です。
その技法は、空気の圧力を用いながら折り重ねた反物に染料を注ぎ、図柄や模様を染色していきます。こうした方法で一度に大量の両面染めを可能にしています。
印刷物と違い、手染めの浴衣はその都度色合いや輪郭ににじみやゆらぎといった独特の表情が出ますので、そういった味わいを楽しんでいただける浴衣です。
また、コンプレッサーで染料を吸い込んで下まで通しているので裏面も表面と同じように色が染まっているのも特徴の一つ。裾や袖口から覗く裏にも同じ柄があり、おしゃれです。また、繊維の奥までしっかり染料が通っていて、繊維の目を潰していないため、もともとの生地の持つ吸収性や通気性が優れています。
絞り染め
糸などで布をくくって染まらない部分を作り、模様を表現します。奈良時代から続く技法で、独特のにじみがあるのが特徴。
素朴で優しい印象の浴衣です。
また、一度布を絞るため、布が柔らかくなり、体に馴染みます。全て手作業でくくるので手間がかかり比較的高価な浴衣になります。
絞りの浴衣のお仕立て
▼一般的な浴衣の反物
▼絞りの浴衣反物
さらに、仕立て前に色止めや湯のしに加えて「幅出し」という加工が必要になります。仕立て上がるとシボが少し残る状態での仕上がりとなり凹凸感があります。
このように、絞りは様々な加工を経て浴衣の形に仕立て上がります。
自分にあった素材の浴衣を見つけませんか?
浴衣選びはまず、色や柄のデザインで選ぶことが多いと思いますが、もし選択肢に悩まれる場合は素材にも目を向けるのはいかがでしょう?
昔ながらの綿や麻素材の他にも、現在は新しい素材が増えてさまざまな選択肢を選べるようになりました。素材を気にしてみると、涼しさや着心地、素材の質感といった目線からも浴衣選びを楽しむことができます。
もし、具体的にどう違うのか気になるようでしたら、お店でご試着・ご相談されるのはいかがでしょう?お気に入りの一着を見つけるためにぜひ浴衣の「素材」も実際に見て、触れることをおすすめします。
浴衣を着るのに必要なもののリストについては、こちらの記事にまとめてあります。
足袋と半衿をつけた、浴衣の夏着物風の着こなし方についてはこちらの記事へ。

written by TAKAHASHI
文化学部卒業後、和文化に興味を持ち地元の歴史ある企業・きもの永見で呉服の世界へ。 日々着物のことを学びながら皆様の「分からない」にお答えしていきます。